第41話

美鈴が戻って来るまで、煙草を吸って待たせてもらうとしよう。

先程美鈴から受け取った煙草を、早速吸い始める。

大きく煙を吸い込み、ゆっくりと煙を吐き出した。


リンはかなりご機嫌なご様子だ。

美鈴と山田がこそこそと話していたし、山田と話していた時の美鈴の表情を見たら、気があるのは間違いなさそうだ。


いきなり『山田は結婚してるかやめておきな』と言ったら、美鈴がどんな顔をするか考える。

普段美鈴をからかってばかりだから、信じてもらえないかもしれない。

そう思ったら苦笑いをしてしまった。


しかし、身近な人が傷付けられるのは気が引ける。

美鈴に『薫さんには関係ないです』と言われてしまえばそれまでだし、もし美鈴が彼が結婚していても構わないと言ったら、『じゃあ、よろしくやって下さい』で終わってしまう。


山田がいろんな女性に声を掛け、片っ端から食い物にしている事を知っている以上、知らん顔は出来ない。

しかし、プライベートな付き合いもなければ、美鈴の事を詳しく知らないし、会社での僅かなやり取りしかない自分が、口を挟んでいいのだろうか。


あれこれ考えていると、出入口が開いた。


「薫さん、誰もいなかったから大丈夫ですよ」


「ごめんね、ありがとう」


煙草の火を消すと、美鈴の元へ向かった。


「薫さんはどちらに行くんですか?」


「とりあえず駅かな」


「じゃあ、一緒に行きましょう。

 あたしも駅に行くんで」


2人で並んで歩くのは、これが初めてだ。

美鈴の歩幅が狭いので、薫は美鈴の歩く速度に合わせて歩く。


会話もないまま、少し歩いていると。


「あれ、山田さんだ」


少し行ったところにある、コンビニから出てきた彼は電話で話をしていた。

こちらには気付いていないようで、出入口の側にある灰皿の前で煙草を吸い始めた。

美鈴は声を掛けようかと思ったものの、電話している時に声を掛けるのは悪いし、何より薫にからかわれそうだからやめた。


「まじでさ、女はちょっと優しくしたり、笑いかけるとすぐに落ちるよな」


聞こえてきた言葉に、美鈴は歩みを止めた。

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