第28話
「しのちゃん、盛大に吹き出すなんて酷い!」
「いやあ、毎度毎度面白いコントをありがとね。
2人でコンビ組んで、お笑いでも目指したらいいのに」
笑いすぎて乱れた呼吸を整えると、しのぶは煙草を吸い始めた。
「やだよ、組まないよ」
「美鈴はネタ考えなさそうだし、セリフも覚えられなそうだし、客席にイケメンいたら涎垂らしながら飛び付きそうだから無理だわね」
「ちょっ、あたしは飢えた獣じゃないもんっ」
「ごめんごめん、イケメンを見つけたらハシビロコウのように、じっと見つめてロックオンするんだったね」
「あたしを動物で例えるな!」
しのぶは笑いすぎて涙目になっていた。
整えた呼吸も、結局無意味に終わってしまったのだった。
「鈴ちゃんは会社でもそんな風に、みんなから弄られてるの?」
「いや、ゆい程弄ってくる人は…あ、1人いた」
薫の爽やかな笑顔が頭に浮かぶが。
「他の人には普通の接し方なのに、あたしにだけはやたら弄り倒してくるというか」
頭を左右に振り、浮かんだ笑顔を消す。
「あ、例の王子様?」
「うん、ひねくれ王子ね」
「王子様って?」
「うちの会社に納品に来る、イケメンな女の人。
会社の女性陣の9割は王子のファン」
「意外と王子は美鈴の事好きだったりして。
ほら、好きな人にはちょっかい出したくなるみたいな」
「ないない。
てか、女が女を好きになる事はあるのかな」
「恋愛は自由だし、誰を好きになったって当人がよければいいんだよ」
「おっ、しのさん大人な発言~」
「100歩…いや、10000歩譲って薫さんがあたしを好きだったら…」
「10000歩って…もう遠すぎて何も見えないじゃない」
「いや、ありえないな。
うん、ないない。
薫さんは嫌いじゃないけど、恋愛の好きはない。
そもそもあたしは女性を好きになったりしないと思う」
しのぶが一瞬暗い顔をしたのを、見逃さなかったのはゆいだけだった。
が、見ていないふりをする。
しのぶもゆいが見ていた事に、気付いていなかった。
「ま~、とにかくさ、懇親会楽しみだね。
報告楽しみにしてるからさ」
「うん、ありがと~う。
あ、しのちゃん、おかわりプリーズ」
「ちょ、飲むの早いなっ!?」
「今日はお酒が美味しいんだもん。
違うな、今日も美味しいんだった」
こうして美鈴達は、日付が変わる少し前まで楽しい時間を過ごしたのだった。
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