第24話

「2人とも仲いいよね~」


「仲良しじゃないです!

 毎回あたしをからかいまくって…。

 からかって面白いんですか!?」


「とっっっっても面白いよ」


「だから爽やかな笑顔で言わんで下さいよ!」

 てか、仕事に戻らなくていいんですか?」


「リンがいつまで経っても判子押してくれないから、仕事に戻りたくても戻れないんだよね~」


薫は納品書を指で挟み、美鈴の顔の前でひらひらさせる。

それを引ったくった美鈴は、受領印のところにバァ~ンと判子を押す。


「はいどうぞお帰りやがって下さいませ!」


「ありがと、リン。

 お礼に荒くれ者が清楚になれる飴あげるね」


「誰が荒くれ者だ、誰が!」


「じゃあね~」


美鈴に飴を渡し、ウインク1つをすると、薫は事務所を後にした。


「あ"~っ、毎日疲れる…」


自分の椅子に、どっさりと体を預ける。


「すっかり薫さんのお気に入りだね~」


「嬉しくないですよ」


「薫さん、美鈴ちゃんを弄ってる時、すっごく楽しそうだよね。

 ドSなのかなあ、ゾクゾクするわ」


「昼間から何言ってるんですか。

 何で毎回あたしばかり攻撃してくるんだか」


「美鈴ちゃんの反応が面白いからじゃない?

 見てるこっちも面白いし」


「いやいやいや、楽しんでないでまじで助けて下さいよ」


初めて逢った時は、今よりもっと簡素というか。

お互いに挨拶をして終わりだった。

今みたいなやり取りをするようになったのは、いつからだろうと考えてみるも、思い当たる節がない。


懇親会の時もこれといって話す訳でもない。

薫が言うように、男性陣と飲んでる事が殆どだし。


「あたしが薫さんと話してても、皆さん殺気…いや、怒らないのは何でですか?」


「兄妹みたいなやり取りだから、ほっこりするのよね。

 あと単純に、2人のやり取りが面白いから」


1人の女性が言うと、皆が首を縦に振る。


「いや、だから面白がってないで助けて下さいって」


「美鈴ちゃんだって、別に薫さんの事を本気で嫌な訳じゃないでしょう?」


「それはまあ、確かにそうですけども」


嫌ではないが、弄られ過ぎてはいると思う。

が、悪意を持って弄っている訳ではないのは解っている。


「ま、嫌じゃないならいいじゃない。

 あ、ほらほら、電話だよ~」


そこで話は終わってしまった。

何だかなあと思いながらも、仕事に戻る美鈴だった。

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