第23話

本日も爽やかに薫が事務所にやって来た。

電話対応をしていた女性は、顔は満面の笑みだが、声のトーンは変わらず業務的。

凄い特技だなと、美鈴は感心するばかりだ。


「薫さん、懇親会楽しみですね」


手が空いていた女性が話し掛ける。


「そうですね、皆さんと飲めるのが楽しみです」


薫の会社は女性が少なく、女性の参加者が少ない。

子供がまだ幼く世話があり、旦那も仕事が忙しい為、行きたくても行けないらしい。


「私も楽しみにしてます~」


「早く懇親会の日にならないかなあ」


女性陣に囲まれていた薫だが。


「リンは来るの?」


美鈴は参加したり、しなかったり。

懇親会は強制ではない為、参加は自由だ。


「そうですね、その日は何も予定がないから行きますよ」


「そっかそっか。

 リンは出席率低いからなあ。

 てか、リンは大体男陣の方で飲んでるよね。

 こっち来ればいいのに」


「酒強いから、課長やら部長やらに呼ばれるんですよ。

 まあ、嫌じゃないからいいんですけどね。

 薫さんのテーブルはハーレム状態ですし、そこに入り込む余地もないし、皆さんの邪魔したくないです」


「私の膝の上にでも座る?」


「ぜってえ嫌です」


そうか、その手があったか。

酔ったふりして雪崩れ込めばいいんじゃねえか。

2人のやり取りを聞いていた女性陣の目が、ギラリと光った。


「まあ、リンはおじ様達と一緒に、ジョッキ持ってる方が似合うよ」


「あたしがおっさんといても、違和感がないって言いやがりたいんですか!?」


「なんなら、頭にネクタイ巻いて踊ればいいのに」


「何処の昭和のおっさんですか!

 今時そんなんやる人いないでしょ!

 いたらいたで希少種ですけど」


「あ、リンは鼻に爪楊枝さして踊るのがいいと思うよ」


「可憐な女子に、ドジョウ掬いやれってか!?

 あたしを何だと思ってやがるんですか!」


「う~~~ん………」


「そんなに考えちゃいますっ!?」


「頑張って考えてみたけど、な~んにも思い浮かばなかった、ごめんね」


「ぎぃいいいっ、爽やかな笑顔で言う事じゃねえでしょ!」


2人のやり取りを見聞きしていた女性陣は、お腹を抱えながら笑う。

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