第2章/星の数に近しいくらい人はいるのに、運命の人と巡り逢えないのは何でなんだろ

第21話

「それでは、参加者は後で紙回すからサインしておいてね~。

 それじゃあ、解散。

 持ち場に行って下さい」


朝礼が終わると、それぞれ持ち場に向かうのだが、女性陣はにこにこ顔だ。

『今日も仕事始まっちまった、帰って寝てたいわ~』と思う人が多いのではないか。

いや、万人がそう思う訳ではない。


「遂にきた。

 数ヶ月に1度の懇親会~っ!!」


「おうよ!

 給料日も嬉しいけど、それ以上に嬉しい懇親会!」


「お酒もツマミも美味しいけど、いつも以上にお酒もツマミも美味しくなるこ~んし~んか~い!」


作業場の女性陣も事務所の女性陣も、テンションは朝から上昇傾向にあるようだ。

そんな女性陣とは別に、美鈴はいつも通りである。


「安い参加費でお酒飲み放題だし、いっぱい食べれるからいいですよね」


美鈴がポツリと言うと、事務所の女性陣達が一斉に美鈴を見やる。


「何を仰る美鈴っち!

 酒や食べ物よりもすんばらしい事があるじゃない!」


「100万ドルの夜景よりも価値があると言っても過言じゃないわ!」


駄目だこりゃ、舞い上がってる。

いや、何かもう翼を授かって羽ばたいてる感じだ。

そう思うも、美鈴は言葉にはしなかった。


「あ~、薫さんと一緒に飲めるの楽しみだわ~。

 気合い入れた服で行かなきゃ」


「セクシーの方がいいかしら。

 いや、可愛い系かなあ。

 あ、ネイルどうしよう」


美鈴の働く会社と、薫が働く会社の懇親会。

数ヶ月に1度行われており、会社同士の仲を深めるものである。

両社の社長が仲良しな為、双方都合がつくと行われるのだ。


薫が入社する前から行われていたが、参加者は疎らだった。

が、薫が入社してからは、一気に参加者が増えたのは記憶に新しい。


会社全体の親睦を深める目的なのだが、双方の女性陣は皆薫に行ってしまう為、よもや『薫と親睦を深める会』になりつつある。

が、下手な事を言えば火や槍や爆弾等が飛んできそうなので、男性陣は口を紡がざるをえない。


「薫さん、どんな服で来るのかなあ。

 まあ、何着ても似合うからいいんだけど」


既婚者の女性は、甘い溜め息をつく。


「今回こそ、くじ引きで当たりを引きたいわ~」


別の女性は嘆く。

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