第14話

結局、薫は進学をする事にした。

付属大学を選んだ。

茜は違う大学を選んでいた為、別々になってしまうが、友人関係が疎遠になる訳ではない。


勉強は嫌いではなかったし、成績も悪くなかった。

出席日数も問題ないし、風紀面も注意された事もない。

内申も問題はないだろう。


「薫の髪、長くて綺麗だよね」


いつだか茜に言われた。

小さい頃から、母親の真似をして、髪を伸ばしていた。

普段はポニーテールにしていて解りづらい。


「薫は美人だけど、髪短くしたらイケメンになりそう」


「女子なのにイケメンって解らないよ」


「ほら、最近は男装女子が流行ってるじゃない。

 アニメやゲームのキャラをコスプレする人も、女の子が男のキャラのコスプレしたりとか。

 ちょっと前は男装=宝塚ってイメージだったけど、たまたまテレビでコスプレしてる人の特集やってて、見たらイメージ変わったもん」


茜はゲームやアニメ、漫画が好きで、よくその話を聞いていた。

お陰で薫も、その種の話に詳しくなっていた。

が、どっぷりハマる事はなかった。

ただ、茜が貸してくれる漫画や、アニメは面白かったので好きだった。


「ママさん、具合どう?」


たまに遊びに来ると、茜は必ず母親に顔を見せた。

茜も母親の事が大好きで、『自分の母親よりもママさんの方が好き』と溢した事があったくらいだ。


「変わらずだよ。

 ご飯を食べる量が、前より減ったかな…」


「そっか…。

 また今度、お見舞いに行くね」


「ん、来て来て。

 お母さんも喜ぶから」



高校を卒業し、晴れて大学生になった。

相変わらず女子しかいない生活。

周りの子達は、彼氏やら男友達と遊ぶ事でご多忙のようだ。


お洒落にも、化粧にも、ファッションにも、まして彼氏や男友達にも興味がなかった。

新しく出来た友達に、「彼氏いるんでしょ?」と当たり前のように聞かれ、いないと答えると「勿体ないよ!紹介しようか!?」と言われる事も多かったが、丁重にお断りした。


恋愛はこの先、いくらでも出来る。

けれど、母親との時間はどれくらい残されているか解らない。

今はひたすらに、母親との時間を過ごしたかった。


大学が夏休みの間に、車の免許を取る事にした。

母親の体調がいい時は車に乗せ、ドライブに行きたかったからだ。

母親の体調がおかしくなった時、自分の車で病院に連れていける意味もある。

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