第5話

世の中の女の子や女性は、人生において1度くらい憧れた事があるであろう『王子様』とういもの。

背が高くて、イケメンで、優しくて、爽やかで。

気取らず、飾らず、スマートにレディをリードして。

これで金持ちだったりしたら万々歳なもの。

が、そんな都合よく存在はしないから、より欲したり願ったりしてしまうのかもしれない。



竹田美鈴が通う会社は、大手の下請け会社で、発送作業をメインとしている。

利益は中の中で、しっかりとしているし、ブラックではないのがありがたいところ。


自宅から歩いて駅まで行き、電車で2駅。

駅から15分くらい歩くと、会社に到着する。

2階建ての、ちょっと古い建物。


1階は作業場や倉庫、2階は事務所や休憩室がある。

美鈴は事務員だが、繁忙期の時や人員不足の時は、1階の作業を手伝う事もある。


今日も電話対応をしたり、パソコンで入力作業をしたり、週に1度回ってくるトイレ掃除をしたりと忙しい。

10:30に10分の休憩、12時から1時間の昼休憩、15:30に10分の休憩があるが、忙しい時は休む暇はない。


自身の仕事を終え、一段落していると、聞き慣れたバイクの音が聞こえてきた。

今頃1階にいるお姉様達は、そわそわしながら待ち焦がれているのだろう。

朝コンビニで買った、ペットボトルのミルクティーを飲みながら、美鈴はそんな事を思う。


会社の女性従業員の『憧れの君』とでも言えようか。

毎日同じ時刻に、荷物を届けにやって来るその人。


バイクのエンジン音が止まったし、社内に入っただろう。

と、間を置かずに女性達の嬉々とした声が聞こえてくる。

下の階で大声、大きな音がすると2階にもしっかり聞こえてくるのだ。


『王子様』というものは、何も男性だけに限った話ではない。

女の『王子様』も存在するのだ。

漫画やアニメの中だけの空想くらいにしか思っていなかった美鈴だが、彼女を見て実在する事を我が目で知った。


甘いマスク。

たれ目で、左目の下には小さなほくろ。

左右の耳にピアスを2つずつ。

ショートヘアで、髪色は優しい茶色。

背は175cm(らしい)、細身で、脚はすらりと長い。

やや低い声と、優しい笑顔。

優しいのは笑顔だけではなく、勿論性格もだ。

色白で、顔も小さく、モデルに間違えられても文句はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る