第60話

「どうしよう……私、好きみたい」


 抑えきれない想いをこぼすと、呆れたような笑い声が聞こえてくる。


「ははっ、やっとかよ」

「そうね……だいぶ時間かかったわね。ほんと手がかかる」

「どっちをって、聞かないの?」


 震えそうになる唇を強く噛みしめ、恐る恐る二人を見つめる。気持ちが悪いと言われるかもしれない。それでも、隠しておくことはできなかった。


「どっちもでしょ? いいじゃないの。あの二人、お互いを牽制し合ってる感じはするけど、排除しようとはしてないし。顔は似てないのに、さすが双子よね。好きな女が被るなんて」

「あれだけのイケメンを二人も捕まえられるのなんて、咲良しかいないと思うぞ? まぁ堂々としとけっつっても、無理かもしれないけどさ。普通は、愛されてることにあぐらをかいてもおかしくないのにな~。あの人たちも、そういうところが可愛いって思ってるのかね?」

「だって……兄妹、だよ?」


 血が繋がらないとはいえ、小学生の頃から一緒に育ってきた兄だ。

 しかも二人を好きだなんて普通ではない。だが、どちらが好きかと聞かれても、同じくらい好きとしか言えなかった。どちらかなんて選べない。


「あの二人にとっては、咲良が妹でラッキーって感じなんじゃない? 堂々と一緒にいられるし、一緒に暮らしてても不自然じゃないしね」

「そう、なのかな」

「お兄さんたちの咲良への溺愛っぷりって、ちょっと普通じゃないもの。そう言ったでしょ? 咲良が妹だろうが離すつもりはないってのがバシバシ伝わってくるのよ……今回の合コンだって」


 知子がそう言いかけてしまったと口元を手で塞ぐ。

 合コンがどうしたのだろうか。亨と真に関わることなら聞きたい。


「知子、どういうこと?」

「黙っておけって言われてないからべつにいいわよね? 咲良が合コンに参加するって聞いたからでしょうね、真さんが私と堀川に電話してきたの。今までほかの男を遠ざけてきたけど、それだけじゃ咲良がいつまで経っても自分の気持ちに気づかない。だから合コンに参加させるけど、万が一にも危険がないように守ってくれって」


 知子がやや呆れた顔をして、ため息をつきながら詳細を話してくれる。

 亨と真が合コンを許したのは、咲良の恋愛感情に気づかせるため。それに、見張り役がいたからなのだと。

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