自分が今まで信じてきた価値観ががらがらと崩れていく感覚がする。咲良も、少しずつおかしいと気づき始めていた。

　亨や真としていることは普通ではないんじゃないかと。シスコンだなんて言葉で片付けられるほど軽くないのではと。

「じゃあ、俺と試しで付きあってみるか？　初めて顔を合わせるわけじゃないし、慣れって意味では怖さはないだろ？」

「堀川くんと？」

　堀川は知子が好きなのではなかったのか。咲良のために時間を使わせてしまうのは申し訳なかった。それに、堀川の提案は魅力的なはずなのに、少しも気持ちが動かされない。

「俺は咲良が好きだったから、付きあってくれるなら嬉しいけど」

「お～堀川、男らしいね、あんた」

　知子がぱちぱちと拍手を送る。が、思ってもみなかった堀川の告白に驚き、咲良は二の句が継げない。

「好きって……恋愛の好き？」

「決まってる」

「そうなんだ」

　たしかに、堀川なら男性慣れしていない咲良をよく知っているし、咲良のペースに会わせて付きあってくれそうだ。それでも頷けない。堀川に対して好意はあっても。

「ただ」

　堀川が重そうな口を開き、咲良を真っ直ぐに見つめた。

「俺は、好きな子がほかの男とキスするのはいやだし、手を繋ぐのもいやだ」

　はっきり言われて、亨と真の顔が頭に浮かんだ。

　彼らはいつだって互い以外の男性を咲良から遠ざけてきたではないか。どうしてかと考えると、答えは一つしかないような気がする。

「そう、なの？」

「言っておくけど、俺が特別、嫉妬深いわけじゃないぞ？　ほとんどの男がそうだからな」

　堀川が同意を求めるように知子に視線を向けた。

　咲良も釣られてそちらを見る。

「それは当然よね。自分の彼氏がほかの女と……たとえ妹でもキスしてたらいやだわ。咲良だって、お兄さんたちのシスコンをなんとかしたくて、合コンに参加したんでしょ？」

「うん……そうなんだけど」

「堀川と付きあってる咲良を見たら、お兄さんたちも目が覚めてほかの女性に目を向けるかもしれないしね、いい機会なんじゃない？」

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