第五章

第53話

第五章



 次の週末。

 約束していた合コンの日がやって来た。

 いつもだったら口うるさく「近寄ってくる男には気をつけろ」と言ってくる亨と真は、今日に限ってなにも言わない。


(ほんと……どうしちゃったんだろ)


 彼らの気持ちが全然わからない。

 男と付きあうことを許すとは思えないのに、合コンに行くことを反対しない。咲良が誰かと付き合ってもいいと思っているのだろうか。


(おかしいよ、これじゃ……止めてほしいって言ってるみたい)


 彼らの行き過ぎた溺愛を止めたくて、まずは自分がもっと周りに目を向けようと考えただけなのに。気にしているのは、いつだって亨と真のことばかり。


「じゃあ、行ってくるね」

「あぁ、気をつけろよ」

「帰りは迎えに行くから。楽しんできて」


 二人に見送られ、家を出た。

 待ち合わせは、十九時に繁華街のある駅の東口だ。

 咲良は知子と堀川と一緒に店へ行くことになっていた。


「お待たせ!」


 改札を潜って咲良を見つけた知子が手を振ってくる。咲良も手を振り返すと、その後ろから堀川も歩いてくる。同じ電車に乗っていたようだ。


「おーお疲れ」

「お店ってこの辺?」


 咲良が聞くと、堀川がスマートフォンを取りだし、地図を開いた。


「すぐ近くだったと思う。あ~なんとなくわかった。行くか」


 堀川を先頭に、その後ろを知子と歩く。

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