第43話
父の再婚には賛成でも反対でもなかったが、母親と別れてから八年近く、独身のままでいた父がようやく掴んだ第二の幸せを壊すような真似はできなかった。
連れ子である咲良は笑顔の可愛い子どもらしい子どもだった。
新しく兄ができると聞いて喜んでいたのか、初めて会う亨と真にも積極的に話しかけてきた。
義理の母親に対しては他人としか思えず、当然、拒絶反応は出たものの上手く隠した。咲良に対しても同様かと思ったが、自分よりも幼かったからか不思議とそれほどの嫌悪感は抱かなかった。
咲良は、優しく穏やかなふりをしていた真にはすぐに懐いたが、亨にはあまり近づかなかった。
亨も真と同じように咲良には優しく接していたのに、だ。表面上は取り繕えていたはずだった。
「二人とも……私たちが仕事に行っている間、咲良をよろしくね」
義理の母に言われて、内心では不本意に感じていたものの、快く了承した。
それが上手くやる秘訣だとわかっていたし、ただでさえ母親なんて面倒なだけなのに、波風立ててさらに事を荒立てたくはなかったからだ。
小学校から帰り、先に部屋に戻っていた咲良のところへ行った。
「真? 咲良は?」
「疲れて寝ちゃった」
真が咲良の部屋のドアをそっと閉めながら言った。どうやら少しばかり遊び相手になっていたらしいが、慣れない環境に疲れていたのか、数分ほどで船をこぎ出したという。
亨の部屋は咲良の隣だ。真を連れて自分の部屋に入り、ベッドに腰かける。
「なんか、ずいぶん咲良を気に入ってんじゃん」
「そう見えるなら良かった」
「違うのか?」
亨が聞くと、真は疲れたように息を吐いた。
真はどこか潔癖なところがある。女性嫌いは亨よりも真の方が重症だった。真の口振りからすると、咲良への忌避感を上手く隠していただけなのだろう。
「疲れるね……家族ごっこするのも」
「仕方ない。上手くやるしかない」
同時にため息をついたとき、壁を隔てた向こう側から微かな泣き声が聞こえてきた。
「あ~もう、めんどくせぇな」
「起きちゃったみたい。小学生にもなってぐずるってガキ過ぎるよね」
亨と真は重い腰を上げて、咲良の部屋に移動する。ノックをしたところで返事があるはずもないから、ドアを開けて勝手に入った。
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