第37話

真の指先がキスを名残惜しむように咲良の唇の上を優しくなぞる。

 見た目も性格も違うのに、二人はたまに行動が被る。


「いつまでも外にいたら風邪を引く。家に入ろう」

「うん」


 咲良は洗面所で手を洗いながら、先ほどの二人の様子を幾度となく考えていた。

 どう考えても、亨と真が咲良に対して恋愛感情を抱いているようにしか思えないのだが、自分の気持ちにいまいち自信が持てない。

 二人にキスをされてもいやではなかった。キスをされていやじゃなくとも、これが家族愛なのか恋愛感情なのかよくわからない。

 そもそも、二人が咲良に対して本当に恋愛感情を抱いているのかも自信がなくなってくる有様だ。


(結局、合コン……どうしよう)


 咲良には合コンの話を蒸し返す勇気はなかった。


(やっぱり、断らなきゃだめかな。大丈夫って言っちゃったし、一度くらい行ってみたいんだけど)


 亨や真に対しての自分が気持ちがなんなのか、ほかの男性と話してみたらわかるかもしれない。

 彼らへの好きが、恋愛なのか家族愛なのか。それを確認したかった。


(恋愛感情だったら……どうするんだろう。また、キス、するのかな)


 無意識に濡れた指先が唇に触れていることに気づいた。自分はまた彼らにキスされることを期待しているのか。

 咲良はため息をつきながら、まだ赤いままの顔を冷たい手のひらで包んだ。

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