第36話
(……やっぱり、よくわからないや)
義理の兄妹であることとか、抜け駆けがどうの意味とかを考えるより先に、突然の唇へのキスばかりが脳内を埋め尽くしていく。
ロックが外され、外からドアが開けられる。
外に立っていた真に腕を引かれて、車外に出ると、ぎゅっと強く抱き締められた。
「咲良、おかえり」
「ただいま、真くん」
真の背中に腕を回すと、顎をすくい取られ、軽く唇が重なった。
「んんっ!?」
目を見開いたまま真の肩を叩くと、角度を変えてもう一度口づけられる。離れようともがくと腕と後頭部をがっしり掴まれて、動くことは叶わない。
「ふ……っ」
食らい付くようなキスが続き、閉じた唇を舌先でノックされる。思わず口を開くと、隙間から熱を持った舌が差し入れられた。
「あ……う」
自分のとは違う他人の唾液が口腔内に溢れる。亨とは違うキスの味に驚きながらも、真のキスさえも不快に思っていない自分に気づいた。
(なんなの私……誰とでもキスできるの……っ?)
もしかしてとんでもなく淫乱だったのかもしれない。頭の中でぼんやりとそんなことを考えていると、満足したのか真の唇が離れていった。
「真くん、まで……どうしちゃったの?」
唇を離す頃には息も絶え絶えで、真に縋りついて立っている状態だった。それを後ろから眺めていたのか、亨が呆れたような声で言う。
「どうって……亨とのキスシーンをあれだけ俺に見せつけておいてよく言えるね。ここまで煽られたのは久しぶりだよ」
真は亨を睨みながら言った。
「こいつが、彼氏がほしいだなんて言うからだ」
亨の明らかに不機嫌とわかる声色を聞き、真はようやく納得したというように頷く。
「あーそういうことね。咲良が自分の気持ちに気づくまでは待とうって言ってたのに、おかしいと思った。咲良もだめだよ、俺たちがいるのに彼氏がほしいなんて言ったら」
「な、なんで?」
「なんでって。俺たち二人に愛されてるんだから、ほかの男が入る余地なんてないでしょ? ま、入る余地があったとしても入れるわけないけど」
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