第24話
亨や真は、咲良をだしに使って近づこうとする女性を一番嫌う。それだけ学生時代からそういう女性が多かったということなのだが、とんでもない兄バカっぷりを披露してくれるので、嬉しいよりも恥ずかしさが大きかった。
「ちょっかいなんて……ねぇ」
女性たちは顔を見合わせながら、首を傾げた。
そうこう言っているうちに車のエンジン音が聞こえて、駐車場に一台の車が停められる。色とナンバーから判断して亨だろう。
女性たちも亨の車を覚えていたのか、途端に色めき立った。
「お兄さん来たか」
堀川が安堵したような、呆れたような声で言った。
女性たちは堀川の言葉を聞き流したのか、その場から動こうとしない。
「うん、みたいだね」
車から亨が降りてくると、咲良を隠すように女性たちが立ちはだかった。なんとか声をかけてお近づきになりたいという魂胆が見え見えだ。
咲良は閉店準備を終わらせて、奧で事務仕事をしていた知子に声をかける。
「そろそろ終わる?」
「もうこんな時間か……ごめんごめん、シャッター締めていいよ」
「わかった」
とはいえ、彼女たちがいる間はシャッターが閉められない。彼女たちを客だと思っていいのかどうかは甚だ疑問だが。
「あの、お名前を教えていただけませんか? 今日はもう一人のご兄弟はいらっしゃらないんですね」
「よかったら、今度お食事でもいかがですか。私たち、この近くにある会社で働いているので、いつでも予定は合わせられますし」
「どちらにお勤めなんですか?」
女性たちは、眉を寄せ不機嫌そうに佇む亨を囲み、必死に話しかけている。亨が苛立っているのがわかり、咲良はハラハラしながら女性たちに声をかける。
「あの、お客様……そろそろ閉店時間となっておりまして」
「いいじゃない! 少しだけだから! 今はこの人と話してるんだから邪魔しないで!」
亨との会話を邪魔されたと思ったのだろう。女性の一人がいきり立つ。
咲良はため息をつきながら、時計を見た。閉店準備は終わっているし、閉店時間も過ぎている。彼女たちが出ていってくれれば、堀川と咲良は帰れるのだが。
咲良は申し訳なくなり、ごめんと両手を合わせて堀川を見た。堀川は首を横に振り、咲良を庇うように前に立つ。
「すみません……お兄さんはべつとして、花を買わないなら出ていっていただけませんか?」
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