第22話
「そうなんだ……」
亨と真を疑っていたわけではないが、まさかという思いもあった。
好きだのなんだの甘い言葉で誘惑してくる男はだいたい詐欺師だと言われ、そんなバカなと思いながらも、騙されるまいと意気込んでいたが、本当だったとは。ニュースの中だけの話だと思っていたが。
「でも、普通の飲み会で危険なことは滅多にないわ。ただ、酔っ払っちゃってお持ち帰りされるとかね。そういうのはありがちだから、気をつけないと」
「お持ち帰り……あるんだ、そんなこと」
お持ち帰り、つまりそういう目的のために部屋に連れ込まれる危険もあると言われると、亨と真の話に信憑性が増し、かなり尻込みしてしまう。
「そうならないように私も注意して見ておくから、安心して参加して。お兄さんたちには、合コンって言わないで会社の歓送迎会にしとけばいいんじゃない?」
「うーん、でもうそはつきたくないんだよね。帰ったらちゃんと話してみる。行きたいって言えばたぶん止めないと思うから。それに、私だって彼氏ほしいしさ。そろそろブラコン卒業したいし。たぶん大丈夫だよ」
「その合コン、俺も言っていいか?」
「堀川くんも?」
堀川も出会いを求めているのだろうか。咲良が尋ねると、ちらりとこちらを見た堀川が、水に濡れた手をタオルで拭きながら口を開く。
「合コンとか初めてなんだろ? 悪い奴がいないか、見張っておいてやるよ」
お兄さんたちの代わりに。堀川がそう言った。
どうやら場慣れしていない咲良を心配して参加してくれるようだ。
「ありがとう、心強いよ。堀川くん……いい人だよね」
「いい人止まりだけどね」
知子はこらえきれないとでも言うように、噴きだしながら言った。
「いい人で終わりたくね~!」
「じゃあ頑張れば?」
「わかってる」
咲良は仲のいい二人を見て、もしかしたら堀川の好きな人とは知子のことかもしれないと思うのだった。
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