第21話

「お前ら……なんちゅー話をしてんだよ。手を動かせ、手を」


 堀川に呆れた目で見つめられ、咲良は片手を挙げた。


「ごめんごめん」


 話をしながら、処理を終えた花を花筒に入れて並べていく。開店時間は迫っている。急いで準備を進めなければならない。


「つまり、咲良は今、恋人募集中ってことよね? なら、来週末合コンに一緒に行かない? 上場企業の営業マンで年齢は二十七歳だったかな。彼女募集中の人を連れてきてくれるって言ってたから、出会いになるでしょ?」

「うーん、そうだね……行きたい……けど」


 咲良は、合コンかと呟きながらため息をついた。


「なに、乗り気じゃない?」

「違う違う。行きたいんだけど、亨くんたちに説明するのがね」


 亨も真も、基本的には優しく、咲良の行動を制限することはない。義父の会社への入社を断っても、咲良のやりたいことをやるのが一番だと言ってくれたくらいだし、出かけたいと言えばどこまででもついてきてくれる。

 ただ、そこに男性が絡むと話はべつだ。

 学生時代、男子と遊ぶのも危ないからと禁止されていたくらいだ。会社の飲み会も、歓送迎会以外の参加は許されていない。知子と食事に行くことはあるが、やはり帰りは必ず迎えに来る。


(しかも、場所を言い忘れてるときも、ちゃんとお店まで来てくれるんだよね。手当たり次第、捜してくれてたんだと思うけど)


 咲良は成人しているし、彼らの束縛に唯々諾々と従う理由もないのだが、それほどに自分を心配してくれているとわかるだけに、合コンに行きたいとは言いだしにくい。


「反対される?」

「うん、絶対ね。飲みに行って、グラスに睡眠薬を入れられた女性の話を何百回も聞かされる。帰りに後をつけられて家に押し入られた話とか。家に帰ったら、ベッドの下に知らない男性が潜んでた話とか」


 もちろん、非力な女性が狙われやすいのも、男性と初めて知り合う場だからこそ危険が潜んでいるのも、漠然とだが理解はしている。

 けれど、そんな危険な目に遭いたいわけでなくとも、心のどこかで自分は大丈夫なのでは、と楽観視してしまっている部分もあった。


「まぁ……そういう危険もないわけじゃないけど」

「やっぱりそうなの? 簡単に好きとか言ってくる男性を信じちゃだめっていうのも?」

「あ~それは一理あるかもね」

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