第20話

今では、仕事ではそれなりに女性と関っているようだから、女性嫌いも少しずつ治ってきているのかもしれない。

 だからこそ今、シスコンもブラコンも卒業するタイミングなのだと思う。


「女性嫌いで、妹一人だけを溺愛するって、他人から見るとちょっと怖いわよね。血の繋がってない義理の兄妹だしさ。異性として見られてるって可能性はないの?」

「ほんとそれこそまさかだよ。家だと小学生レベルのじゃれあいしかしてないし」


 家族になったのは咲良が小学二年生の頃だ。

 それからずっと家族として接してきた。

 一緒に生活をしていれば、寝起きを見られるのは当然のこと。風呂の時間が被って着替えを見られるのもしょっちゅうだし、お腹を下してトイレから出てこられなくなったことも知られるのだ。


(そういえば……ブラのサイズが合ってないとか言って、亨くんがネットで下着買ってくれたこともあったな)


 一度裸を見られてしまうと〝恥じらい〟は〝家族だし、まぁいっか〟という言葉に置き換わる。咲良の裸を見たところで、二人とも顔色を変えはしない。そんな二人が、自分を異性として見るなんてあり得ない。

 いきすぎた溺愛だとは思うが、二人の態度も昔となんら変わっていない。両親が離れて暮らしている分、愛情が重くなっているきらいはあるが。


「なにかのきっかけでスイッチ入っちゃうとか、あるかもよ~?」

「ないない!」


 咲良は知子の話を笑い飛ばす。

 漫画の読み過ぎだろう。亨の寝汚さや真の腹黒さを常日頃から見て、胸をときめかせたことはない。彼らの外見に恋愛感情を抱く女性たちに物申したい気分にはなるくらいだ。

 ただ、二人の顔を見慣れてしまっている今、どういう相手になら自分がときめけるのかが疑問である。


「まぁそうよね。十年以上一緒にいる家族をそういう目で見ないか、ごめんごめん。ほら、男性向けの本によくあるじゃない。お兄ちゃんにいいようにされる妹系」


 いいように、の意味が咲良にはわからず、茎をハサミで切る作業の手を止めて頭を捻った。


「たしかに溺愛はされてるけど。今日なんて、咲良に飼われたいとか訳がわからないこと言ってたし」

「えっ! 咲良をペットにしたいんじゃなくて!?」


 知子がぶはっと噴きだした。

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