第19話
「それって……」
堀川がなにかを言いかけるのを遮るように、知子が口を開いた。
「ねぇ、本当に? 今まで、まったく? 一人も?」
「うん、小学生の頃から知ってるけど、一人も。隠れて付きあってたとかだとわからないけど。たぶんないと思う」
「どうして言い切れるの?」
「いつだったかな、お義父さんに言われたんだよね。二人は女性を苦手としてるから、咲良ちゃんとだけは仲良くなれてほっとしたって。内気ってわけじゃないし、絶対モテてたはずなのに、女の子と仲良くなるどころか挨拶すらしなかったんだって」
それを不思議に思い、どうしてなのか義父に理由を聞いたことがあった。
義父は話しにくそうにしていたけれど、高校生である咲良ならもう話してもいいと判断してくれたのか、事情を聞かせてくれた。
亨と真の母親は、彼らが小学校低学年の頃、不倫の末に出ていってしまったらしい。それも、度々家にいろいろな男を呼んでいたというのだ。
二人がまだ小さかったため、なにをしているかわからないと思ったのだろう。
けれど、亨も真も年齢よりもはるかに聡明な子どもだった。
度重なる逢瀬の結果、不幸なことに母親が父親を裏切っているとまで知ってしまった。どうするかを二人で相談したのか、仕事から帰った父に打ち明けた翌日、母親は家を出ていったらしい。
小学校の頃から、目立つ外見をしていた彼らは、それ以来女性が苦手になってしまった。
好きだと言って近づいてきても結局は裏切る。母親という自分に一番近い女性で裏切りを目の当たりにすれば、ショックを受けるのも当然だと思った。
その話を聞いて腑に落ちた。
ずっと疑問だったのだ。咲良の亡くなった父の話題は普通に出るのに、彼らの母親の話はまったくと言っていいほど出なかった。
もしかしたら咲良の母親に気を使ってくれているのではと考えていたのだが、理由はまったく違っていた。
(話を聞いて、二人にちょっと同情しちゃったもんね)
どうして咲良を家族として認めてくれたのかはわからないが、咲良に愛情を向ける二人を見て、義父も密かに安心していたそうだ。
「女嫌いなのかしらね。あんなにイケメンなのに」
「そうかも」
事情を話すわけにもいかず、咲良は曖昧に笑った。
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