第16話
(こんなの、彼女とか好きな人とかに見られたら、絶対誤解されるよね)
咲良を溺愛する亨の態度はずっと変わらない。ただ、こんな場面を恋人にでも見られたらまずいのでは、とは思っていた。
(でも恋人の話なんて聞いたことないし、土日だってほとんど一緒にいるし……ほかの誰かと出かけるとか、全然ない……え、おかしくない?)
あまり気にしたことはなかったが、亨と真に恋人ができないのはやはり自分のせいなのではないか。
(このままじゃ、亨くんたちが残念なシスコン男だって思われちゃう……っ)
彼らの口から咲良以外の女性の名前が出たこともないなんて。二十八歳にもなってどうなのだろう。
恋愛一つしたことのない自分が心配することじゃないのはわかっている。けれど、亨と真の恋愛を邪魔したいわけではないのに、このまま二人からの溺愛を甘受し続けていたら、何年経っても変わらない。
二人には感謝している。本当の兄妹でもないのに咲良を家族として愛してくれた。だから幸せになってほしいのだ。
(私に恋人ができれば、ちょっとは変わるのかな)
今までは、反対されるままに男性との付き合いを自重してきた。
友人や知り合いであっても、男と二人で会うことは非常に危険だと聞かされ続けていたし、食事会であっても男性がいると知れば必ず迎えに来る二人だ。それが面倒で恋人はいらないと思っていた。
ただ、二人が誰かと結婚したら、いずれは自分も、とそれくらいの感覚でいたのが間違っていたように思う。
(亨くんも真くんも結婚しないでずっと私の面倒見てそう……それってつまり、私も一生独身ってことじゃない!?)
それはいやだ、と切実に思う。咲良にだって、恋をしてみたい気持ちは少なからずあるのだ。
いつかは自分にも恋人ができて結婚するはず、と漠然と思っていても、男性の知り合いすらできない。
(自分から動かないと、だめってこと?)
出会いを求めていても、家と職場の往復ではなにかが起こるはずもないし、休日はどこに行くにも兄のどちらかが一緒だ。カップルと間違われることも多く、当然、ナンパされた経験もない。
そろそろ自分自身のブラコンを矯正するためにも、なにかを変えてみることは必要かもしれない。
咲良はそんなことを考えながら、駐車場から店舗の裏口へと歩いていく。
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