第11話
二人とも女性との付き合いを面倒だと思っているのに、引くほどモテるから、焦りがまったくないのだろう。
小学生の頃、二人の妹というだけで上級生から羨ましがられた。
咲良と仲良くなれば、兄たちとも仲良くなれると思った女子が大挙して家に詰めかけてきたこともあったくらいだ。
それが無理だと悟ると、今度は邪魔者扱いをされた。兄たちにベタベタ近づくなと虐められ、もう一方で兄たちに渡しておいてとラブレターを渡される。
(なかなかヘビーだったよね……)
それでもくじけずに生きてこられたのは、亨と真の優先順位がいつだって咲良だったからだ。
彼らは誰に告白されても受け入れなかった。特に、咲良に強く当たる女性に対しては、辛辣とも言えるほどに二人とも柳眉を逆立てた。
二人の尽力もあり〝曽根山妹を虐めたら兄に仕返しされる〟と広まったせいか、咲良を虐める女子はいなくなった。男子生徒に至っては、なぜか〝曽根山妹に近づいたら殺される〟だったのが不思議である。
(二人とも怖くないのにね?)
咲良が、ダイニングテーブルにつくと、ややあって亨もやってきた。顔を洗って着替えてきたのか、しゃんとした姿で美形に磨きがかかっている。
亨の分のご飯をよそい、テーブルに置いて三人で手を合わせた。
「いただきます」
ダイニングテーブルは六人掛けで、咲良が中心に座り、中心を空けた向かい側左右に二人が座っている。
咲良の隣に座る権利を取り合った結果、こういう席順に落ち着いたのだが、兄たちの行動が小学生レベルなことに心の中で大いに突っ込んだ。
咲良はぐるりとリビングを見回しながら、食事を進めた。
(リビングとダイニングは花瓶の水を替えたし……亨くんの部屋に飾ってるアネモネ、しおれてきちゃってたよね。明日くらいに新しいお花買ってこようかな)
リビングにもキッチンにも、各部屋にも、咲良が選んだ花々が生けられていて非常に華やかだ。
幼い頃、公園に咲いていた名前も知らない花をテーブルに飾り、仕事の忙しい母に少しでも喜んでもらおうとしていた。
虫がついていて迷惑だっただろうな、と大人になってから思うも、母は「ありがとう」と喜んでくれた。以来、咲良は花が大好きになったのだ。
食事を終えると、真が食器を洗い、亨が拭き上げて食器棚に戻していく。
その間、咲良はエプロンを外し、化粧をして髪を整える。これがいつものルーティンだ。
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