第9話
現実逃避気味に考えたが、冷静になるとやっぱりおかしい。
「なんか二人とも意味がわからない」
「そう? 俺たち相当わかりやすいと思うけど」
咲良が真の肩に手を突き突っぱねると、意味ありげな顔で微笑まれた。
朝から顔面偏差値の高い二人に詰め寄られて、眩しさに頭がくらくらしてくる。やはりこの二人の顔面に慣れていたら、いつまで経っても恋人ができなそうだ。
「あ、咲良、ブラウスに醤油跳ねちゃってるね。朝ご飯作ってたときかな、着替えた方がいいよ」
ふと気づいたように真が言った。
よくよく見ると、白いブラウスの胸元が茶色くしみになっている。そう目立つわけではないが、こういうのは放っておいてはいけない。
「え、あ……ほんとだ……すぐ取らないと落ちないね。着替えよ」
咲良の部屋は亨の隣で、真の向かい側だ。部屋に入ると、後ろからついてきた真が咲良の肩に手を置いた。
「真くん?」
「着替えさせてあげる」
そう言いながら、真は咲良を背後から抱き締めるように立ち、ブラウスのボタンを上から外していく。
「なんで? 自分でできるからいいよ」
「だめ、着替えたらまたマーキングしないとだから」
「犬の話まだ続いてたの……」
咲良は呆れたように言いながらも、半ば諦めていた。
中にはキャミソールを着ているし、風呂上がりに同じ格好でいることもあるから身体を見られることに羞恥心はない。だが着替えさせてもらうとなると話は別だ。
「真くん……私、小学生じゃないんだけど、知ってる?」
「二十四歳の大人の女性になったよね、知ってるよ。ただ、たくさん触っておかないと、一日会えない間に、ほかの男の匂いがつくかもしれないでしょ。それは俺も亨も困るから」
まだ犬ネタは続いていたらしい。
真は器用にも片手でブラウスのボタンを外し、もう片方の手で咲良の首に触れてくる。優しく撫でるような手つきで触れられると、くすぐっくてたまらない。
「真く……っ、だめ、それ……くすぐったい」
「昔からくすぐられるの弱いの、ほんと可愛い」
真はくすくすと笑い声を漏らしながらブラウスを脱がし、今度は咲良の脇の下に手を入れてきた。指先で脇をくすぐられて、じっとしていられなくなる。
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