第6話
「お弁当作り好きだし、それはいいの。真くんも、私の作ったお弁当がいいって言ってくれるし」
「俺も、真が作ったのよりお前の弁当がいい」
「本当は真くんの方が料理上手なのにね」
亨は家事が嫌いで、自分からはほとんど動かないが、真は細かいことによく気がつき咲良を助けてくれる。
「俺だってやろうと思えばできる」
真に張り合うような発言につい笑ってしまう。
「やらないんでしょ、それに亨くんがキッチン使うと長いからやだ。真くんもだけど。あーあ、この時間がなければ、私もあと十分遅く起きられるんだけどなぁ」
咲良が頬を膨らませると、亨の唇がそこに触れた。生まれも育ちも日本なのに、亨も真もしょっちゅう咲良の額や頬にキスをしてくる。
小学生の頃から続くスキンシップは慣れたものだが、幼い頃はよくからかわれたものだ。
さすがに外ではしなくなったものの、朝と夜の挨拶に加えて、おかえりなさいのキスまで求められると、新婚夫婦かと突っ込みたくなってくる。
しかも、これだけの美形を間近で見ているから、自分には恋人ができないのではないかと考えてしまう。二人がかなりの心配性で兄バカなのもあるが。
「も~なに?」
「朝の挨拶、まだだったろ? おはよう、咲良」
「おはよう。さっきもキスされたような気がするんだけど」
「あれは挨拶じゃない。ただのスキンシップ」
していることはただのキスだよ、と言おうとして止めた。だらだらとベッドに寝転がっているが、今日は平日。三人とも仕事だ。
「もう起きてね。五分以上経ってる」
「まだお前からしてもらってない」
亨の腕も足も、まだ咲良の身体に絡まったままだ。
離してもらわなければキッチンに戻れない。咲良は仕方なく、亨の頬に唇を寄せた。すると亨が急に首を傾げるため、唇と唇が触れてしまう。
「も……っ、ん、動かないで……口、くっついちゃう」
腕を突っ張ると、ますます執拗に口づけられた。眉の上、まぶた、目尻と下がって、最後に頬。頬というより、唇の端と言ってもいいかもしれない。
「べつに口にキスしてくれてもいいけど」
ぐっと腰を引き寄せられて、端整な顔が間近に迫る。
「なにバカなこと言ってるの」
咲良は亨の顔を手のひらで押しやり、頬に口づけた。すると突然部屋のドアが勢いよく開けられて、真の声が響く。
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