第50話

「「「……」」」


「……」



あたしぐらいになると幼馴染みの機嫌の良し悪しなんて一発でわかる。



「いやいや、アレは誰が見てもわかるでしょーよ」



地佳の言葉に頷く風磨。



涼子さんの荷物を取りに行って、一時間後ー。


あたし達の方は何事もなく帰還した。


もし涼子さんを狙う男が彼女の家の近くに居たらその場でもうボコボコにしてやろうと思っていたんだけど……


居なかった。


チッ。



「舌打ち!!」



涼子さんの家に入りたいと騒ぐ地佳を絞めて落とし、あたし“だけ”入って



「クソッ!!なんで俺はあそこで絞め落とされたんだ!!」


「良い匂いだった」


「ああああっ」


「うるさい」



キッチンの床に膝から崩れ落ちる地佳。



それを踏み付けつつ



今、帰ってきた雷斗に話しかける。



「雷斗、なんか良いことあったんだろ?機嫌が良い……いだいっっ!!」



コーラ!!


コーラが顔面に飛んできた!!



顔面でそれを受けるあたし。



「あの不機嫌丸出しの雷斗の顔をどう見て機嫌が良いなんて思うんだ?」



心底不思議って顔をする風磨。



「それな。どう考えても不機嫌じゃん」



風磨に同意する地佳。



嘘だろ……?


冒頭のあたしの言葉は一体……



「雷斗、機嫌悪いの……?」


「いーや、最高に良い気分だぞ?」



おっ!?


お……



「しゅみません。あやまるのでほっぺをつねるのはやめてくだしゃい」



輝かんばかりの笑顔で、あたしの頬を抓り上げる雷斗に謝り懇願する。



このままではアンパ◯マンになる!!


ほっぺがとれて食べられる!!



「お前の頬じゃあ、腹は満たされん」


「ひどいな、オイ……。こんなにつねりあげといて」



ペイッと離されたほっぺを撫でていると、涼子さんが困った表情をしてた。



申し訳ない。



そんなことを思っていたあたしに更なる悲劇が襲いかかる。

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