第45話

「むーっむーっ」



「もう本当に奴のことは気にせずに続きをどうぞ」



迷うような表情のあと、涼子さんは続ける。



「どういうことか、聞こうとしたんです。でもお客様が来てしまって……」



その後もタイミングが合わずに聞けなかったそうだ。



でもそんな話しをしたのはその時だけで店長の勘違いだ、と思うことにしたらしい。



「でもこの間……」



涼子さんが目を伏せる。



それにまた「ふんすっふんすっ」なんて地佳の鼻息が聞こえてくる。



おお、生きていたか地佳。



凄く静かになったからドSにヤられたかと思ったけど……


ドS、案外優しかったらしい。



「なんだよ」



「なんでもない」



雷斗に睨まれる。


怖。



「バイト仲間の女の子と話しをしていたんてすけど」



「その時、店長は?」



「居ました」



風磨の問いに涼子さんはキッパリと答える。



風磨は店長を怪しんでいるのか?



「その子は彼氏が出来たばかりで、彼氏としたいことなんかを話していたんです」



……女の子っぽい。


とても女の子っぽい。


そうか女の子同士だとそんな話しになるのか。



いっつもコイツらと居るから、そんな会話をしたことがない。



「私は水族館に行きたいって言ったんです」



少し照れくさそうに言う涼子さんは可愛かった。



それに鼻息荒男はないきあらおが鼻息荒く何かを言っているが、もう無視をした。



手に鼻息をかけられてる雷斗はメチャクチャ嫌な顔をしているが。



「そしたら次の日、お客様が品出しをしている私の前に突然来て言ったんです」



変な男=店長ではなかったようだ。


お客だったか。



「一応お聞きするんですが、知り合いでは?」



「ないです。本当にたまーに来るお客様のようで、私は覚えてない……んですけど」



そんな客に何を言われたというのか。



「『隣の県の大きな水族館、あれに行こうよ。もちろん泊まりで』って」



「「「「……」」」」

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