第44話

「私、N大学に通ってまして」



「フンッフンッ」



「……」



「両親の仕送りだけではなにかとお金が足りなくて、コンビニでバイトをしているんですが」



「フンッ」



「……」



「よくあるやつだな」



「客に好かれたか」



涼子さんの話しに風磨と雷斗が先読みする。



変な男とは客か、バイト仲間か。



「フンンッ!?」



ガタッ!!


あたしは椅子から立ち上がると雷斗の隣に移動する。



「なんだよ、来るな」



「来るなって傷付くだろうが。さっきから地佳の鼻息が煩くて集中出来ないんだよっ」



「フンッ!?」



え!?とばかりにあたしを見る地佳。



返事まで鼻息だし。



「つい、興奮しちゃって」



おお、言葉を発した。



って



「「「変態か」」」



「違うしっ」



「話しが進まないから、地佳は口と鼻を塞いでろ」



「死ねと!?」



風磨にそんなことを言われ



「俺が塞いでてやろうか?」



残忍な笑みを浮かべる雷斗。



地佳は慌てて己の口と鼻を手で塞いだ。



静かになったところで、涼子さんが続きを話し始める。



「店長が急に変なことを言い出したんです」



「「店長」」



「男?」



「はい」



雷斗の言葉に頷く涼子さん。



「男が出来ると女は変わるって言うけど、涼子ちゃんは変わらないねぇ〜。って」



「男!?」



地佳が口から手を離し叫ぶ。



その表情は悲壮。



恋が始まる前に失恋とは……かわいそうな男だ。



あたしと風磨と雷斗は笑いを堪えながら、地佳に合掌をした。



南無。



「失礼ですが、お付き合いしてる方が?」



聞くと、涼子さんは首を横に振る。



おん?



「いえ、恥ずかしながら年齢=彼氏いない歴……です」



涼子さんは恥ずかしそうに俯いた。



あー、変なことを聞いてしま



「えっ!?」



それに対し、嬉しそうな地佳。



「雷斗」



「あいよ」



今度は雷斗が立ち上がり地佳の隣に座ると、問答無用で地佳の鼻と口を塞いだ。

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