第37話

「骨は折れてないけど、しばらく安静だね」



戻ってきた公園で地佳に手当してもらうと、そう言われる。



安静か……じゃあしばらくは雷斗の背中にお世話に



「殺すぞ?」



「コワッ」



ちょっ、奴の目はマジなんですけど?



「そりゃあそうだよ、海。これはないよ」



そう言った地佳は雷斗を後ろに向かせる。



雷斗の背中はベタベタに濡れ、Tシャツに至っては色が変わっていた。



おおお……なかなか凄いことに……。



「じゃあ地佳に」



「歩けなくはない。歩け」



「ひどっ」



ちょっ、奴の目もマジなんですけど?



「風って居やしねぇっ」



ちょっ、一番古株の幼なじみが逃げたんですけど?



「はいはい、自分で歩きますよーだ」



「……」



だ、のところで赤宮彩葉と目があった。



何やら不貞腐れているようだが、知らん。



てか……



「「「まだ居たのか」」」



「うるせぇ。帰るよ。帰りゃぁいいんだろ」



「「「てんきゅー」」」



「なんの礼だよっ」



お礼を言えば吠えられる。



「どうなの?お礼を言われたら怒鳴られたんですけど?」



「これだから可色高校の奴らは嫌よね」



「や・ば・ん」



井戸端会議のマダムと化したあたし達にイラっとしたんだろうな。



何も言わずに去って行こうとする赤宮彩葉。



やりすぎたか。



「ありがとう」



今度は茶化すことなく礼を言う。



ウザかったけど、焼き芋や母親捜しを手伝ってくれたから。



立ち止まった赤宮彩葉は振り返り



「連絡先」


 

をまたしても聞いてくる。



「え?嫌だけど」



「だぁあああっ」



お断りすると今度こそ、本当に叫んで去って行った。



「怒りっぽいね、赤宮」



「あれはカルシウムが足りてねぇ」



「雷斗ともね」



「あ”……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る