第36話

海side



いやー、泥棒達を蹴散らしたまでは良かったんだけど



足がね、前輪を蹴り上げた足が痛いよね。



けどそれを被害者の人に言うと「自分のせいだ」と自分を責めてはいけないから黙ってた。



煩そうだから赤宮彩葉にも黙ってた。



カバンを無事に持ち主さんに返したところで警察が来たから逃走。



アイツらは面倒くさい。



持ち主さんもわかってくれたみたいで、頭を下げて見送ってくれた。



良かった、良かった。


足は痛いけどね。



騒ぎを聞きつけたのか、ヤンキーズが来た。



すぐに、足が痛いことがすぐにバレた。



まっ、そんなもんかと思う。



あたしもヤンキーズの異変にはすぐ気付くし。



長く長く一緒に居るとね。



隠さなくて良くなったので、痛いことをめちゃくちゃアピールして雷斗の背中に飛び乗った。



嫌がらせで。



ヤイヤイ言う雷斗。



だけど知ってるからね。


絶対に下ろしたりしないって。



案の定、赤宮彩葉の提案も即拒否してくれた。



「ぬぅふっふっふっふっ」



「キモい。てか冷てぇ!!オイッ海!!テメェ、ヨダレ垂らしてんだろう!?」



「寝てる。大洪水だ」



雷斗の背中にくっつけていた顔を覗き込まれ……とても真面目な声で風磨が言う。



いや、ヨダレのことは黙っとけよこの野郎。



「寝るのが早ぇっ。てかマジのすっげぇ嫌がらせじゃねぇかっ」



罵詈雑言を吐いている雷斗の声を子守唄に、あたしは心地良く寝た。



ジュルルッ



「啜るなっ」



ダラー……



「垂らすなっ」



注文が多いな。

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