第34話

「あの……っあのっ」



おばさんが一人こっちに走ってくる。



運動不足そうなおばさんは汗だくだ。



多分……



「このバッグの持ち主さんですか?」



海が聞く。



するとおばさんは大きく何度も頷いた。



「はいっ!!はいっ、そうです!!」



その様子から嘘をついてる感じはない。


叫んでいた声もこんな感じの声だった。



間違いないだろう。



「災難でしたね。どうぞ」



……笑った。


おばさんを安心させるためにか、海は微笑んでバッグを返した。


その微笑みが綺麗で、魅入ってしまう。



おばさんはそれを大事に大事に抱きしめた。



「ありがとう!!本当にありがとう!!お金っ……お金を下ろしたばかりでっっ」



「それは良かった」



「足っ、大丈夫?」



そうだよ!!



「怪我は!?」



「全然大丈夫です」



慌てる俺に対し、おばさんに笑顔で答える海。



オイ、俺には。



自転車の前輪を蹴り上げた足を問題ないとフラフラさせる。



ホッとしたところで、野次馬たちを押しのけて警官が二人こっちへ。



「じゃ、あたしはこれで」



面倒はごめんとばかりに、おばさんにそう言って海はそそくさとその場を離れにかかる。



理解したおばさんは海に向かって何度も何度も頭を下げていた。



普通に歩いてるから本当に大丈夫みたい……



「「「海」」」



少し先に火野と森高と音無が立っている。



「何かあったのか?」



「ガキが居ねぇが母親は見つかったのか?」



「うげっ。ポリスが居んじゃん」



各々話し始めた三人だったが……突然険しい表情になり



「何をやった、お前は」



「このバカ」



「海!!」



??


海が何かしたって、わかるのか?



どうやって……



「う”……」

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