第32話
彩葉side
「ママをイジメるなっ!!」
母親の抱っこから下りた迷子の坊主、陽翔が母親の前に立ち両手を広げる。
守るように。
「陽翔……」
「あーん?」
海が表情を歪める。
なかなかの悪役顔。
双子の姉の紫は絶対にこんな表情はしない。
本当に、顔以外は全く似ていない。
だからこそ面白い。
「ママはぼくがまもるっ」
「ほーん?」
海は陽翔の前まで行きしゃがむと、陽翔の鼻を摘んだ。
「最初にママから離れたのは誰だ?」
「うぅっ……」
「ママから離れないでね、って言われてたんじゃないのか?」
「うぅぅっ」
どうやら図星らしい。
「ママを守りたいなら、離れるんじゃない」
「うん!!わかった!!」
「陽翔……」
「良い子だ」
グシャグシャっと乱暴に、海が陽翔の頭を撫でた。
くすぐったそうに陽翔が笑う。
「おねえちゃん!!おにいちゃん!!バイバーイ!!」
陽翔が元気よく手を振り、母親が深々と頭を下げて去っていく。
それに手を振り返す、俺と海。
「意外だな」
「あ?」
「子供に優しいなんて」
「アンタはあたしをどう見てるんだ……」
半眼で睨まれる。
中性的で整った顔立ち。
触りたい……。
衝動的にそう思って手を伸ばした、その時
「泥棒ーーっ!!」
大絶叫が。
泥棒
「オイッ!?」
海が声がした方へ走り出した。
見事なスタートダッシュに置いていかれる。
「海!!」
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