第31話

「本当にありがとうございました!!」



深々と頭を下げるお母さん。



額に汗が滲んでいる。



必死に捜したのだとわかる。



わかるのだが……。



あたしは真っ直ぐお母さんを見た。



眼光が鋭かったのか、お母さんが怯む。



いやいや、決して睨んだわけではないのですよ。



少々つり上がった瞳は、真剣な表情をすると


“怒っている”とか“睨まれている”とか


よく誤解されるのだけれど。



そのどちらでもない。


けれどこの一言だけは言わせてほしい。



「見つけたのがあたし達だから良かったけれど」



「っつ」



自分達が正義の味方だと言ってる訳では無い。


むしろ逆だし。


子供に興味がないだけで。



「危ない奴に捕まったり、自分でついて行っていたりしたらどうするんですか?」



「すみませ」



「この年頃の子供は本当にちょこまかとよく動きます。男のコなら尚の事。大変かもしれません。事情もあるでしょう。ですがどうか、一歩外に出たら、子供から目を離さないでやって下さい」



手を繋げ、というのはなかなかに難しいと思う。


嫌がる子供もいるし、荷物などあれば更に難しいだろう。



でも犯罪は……犯罪の芽はすぐ近くに“ある”のだ。



「すみませんっ」



泣きそうな声で謝られる。



赤宮彩葉は何も言わない。


ただあたしの横に立ってあたし達を見ている。



“そんなに言わんでも”とか言われるかと思ったけれど。



「やきいものおねえちゃん!!」



異議を唱えたのは男のコの方だった。



焼き芋のお姉ちゃん……呼び方よ。



んで、それに笑うんじゃないよ、赤宮彩葉。

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