第21話

咲坂紫。



その名は……戸籍上のあたしの姉。




この男、一体何を……



風磨も雷斗も地佳も訝しげな顔で赤宮彩葉を見てる。



だって曲がりなりにも“彼女”は同じ高校の、名前で呼ぶような仲でしょ?



それなのにそんな彼女を“売る”なんて……




「赤「咲坂紫さんかぁっ!!」」




……うるさいんだが?




問いただそうとすると、リーダーの大きな声に遮られた。



その声にイラッ。




「ああ、咲坂だ」




風磨?


いや、うん。


嘘は言ってないな。


あたしも咲坂だし。




「美人ではねぇわな」



「お前の目は節穴かぁっ!!」




雷斗の言葉に吠えるリーダー。



唾が凄い。




「野生動物に近いよねっ」




地佳?




「お前達は一体誰の話しをしてるんだ!?」




この三人のヤンキーズが話してるのは、“あたし”のことだな。



赤宮彩葉の言った、咲坂紫ではない。




「赤「もういい!!」」




いちいちデカい声で遮るなや。




「「「「「……」」」」」



「お前達じゃ話にならない!!俺は、咲坂紫さんを捜しに行く!!」




あたし達五人は深く頷いた。



さっさと行け行け、と。




「待ってて、紫さーーーーーんっ!!」




もう名前呼び。



ちょっと怖いな。



そしてすまないな、咲坂紫。




叫ぶだけ叫んで、リーダー達は去って行った。



なんだったんだ……。



完全に不完全燃焼だ……。



地佳に八つ当たりしようとしたら




「そうそう殴られてたまるかーいっ」




避けられた。



そして逆に



ドスッ!!



頭にチョップをくらった。




「イテェ……」



「ダセェ……」



「弱ェ……」





問答無用、あたしは雷斗と地佳に殴りかかった。

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