第12話

「殺す……」



「なんでだよっ」



「綺麗にっ、綺麗になったよ!!」



「殺すっ」



「なんで二回も言うんだよっ」



「海がキレたぁあああっ」




ビッチャビチャのタオルを振り回し始める、咲坂海。



逃げ回る森高と音無。




「で?お前はなんでこんな所に居るんだ?」




火野が俺の横に立つ。



コイツとは結構長い付き合いだが、未だによくわからねぇ。



熱い奴なのか、冷めた奴なのか。



真っ直ぐコッチを見てくる切れ長の瞳からは、感情が読み取れない。




「紫だと思って、声をかけた」




火野の質問にそう返せば、奴の眉がピクッと動く。




「?」



「……そんなに似てるのか?」



「似てるなんてもんじゃねぇ。“同じ”だ」




違うのは、髪型と性格だけ。




「そうか」




眉間にシワが寄る。



……嫌なんだな。



お前がそんなに表情に出す程に。




「……どんな奴なんだ?」



「聞きてぇのか?」



「……いや、いいわ」




苦笑して火野は、咲坂海を見る。



そんな火野の視線に気付いた咲坂海が、大人びた表情で笑う。



さっき変な悲鳴を上げ、情けない表情をしていた奴とは思えない。




「男二人で何カッコつけてんだ?」



「つけてないわ」




カッコつけるってなんだ?




「オラ、焼き芋するぞ」



「焼き芋ーーっ!!」




大丈夫なのか……?



森高と音無が咲坂海の隣に立ち、言ってくるが……



顔面ビチャビチャだぞ?




「するか」




火野が三人の元へ歩いていく。



俺は……




「アンタも食べていく?」



「……」




咲坂海に聞かれ、俺は……




自然と火野の後を追っていた。

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