第11話

赤宮彩葉side



咲坂紫が双子ーー?



そんなこと一度も聞いたことがない。



だが……



この咲坂海という女、顔や声は全く紫と同じで疑う余地はない。



しかし、浮かべる表情や性格は紫とは全くの別人だった。



紫は“女”の見本のような“女”だ。



ウェーブのかかった背中まである長い茶髪にいつもテカテカ光っている唇。



上目遣いが得意で、声音も高く媚び甘い。



可色高校一の美人で、可色高校の頂点に居る男の彼女ということで“姫”と呼ばれチヤホヤともてはやされている。



ハッキリ言って俺は嫌いだ。



なのになんでこんなに紫のことを知っているかって?




紫の男が俺の友達だからだ。



ソイツに趣味が悪いことこの上ない、と言えば


『容姿良ければ全て良し!!』


と返ってきた。




アホである。



しかしこの紫の妹ーー。



紫からは一度も聞いたことのない存在。



四人の話しを聞いていると、一緒に暮らしてもいなければ、長い間会ってもいないらしい。



名前は海。



全てが正反対と言える。



長めのショートカットの髪は艷やかな黒。


真っ直ぐ人の目を見る切れ長の瞳。


女とは思えない口の悪さに行動のガサツさ。



急に落ち葉に火を付けたかと思うと煙に巻かれ顔を真っ黒にするという。



紫では絶対に考えられない。



ヘタをすれば男にも見えるのだが……



俺はこっちの方が好きだ。




「ちょっ……雷斗。そのビチョビチョに濡れたタオルはなんだ…?」



「あ?その黒い顔を拭いてやるからこっち来い」



「いやいやいや、おかしいだろ!!絞れよ!!」




口が悪いな。



言ってることは正しいが。




「地佳」



「あいよー!!」



「のあっ!?地佳、このバッ離っ」
























ビターーンッ!!




「ふみゃあああっっ!!」





あーあ……。

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