第8話

「お前、赤宮彩葉あかみやいろはじゃねぇか」




抱きつこうとしてきた地佳をペイッと受け流していると、段ボール箱を持った雷斗が。



イヤーな顔で男を見つつ、その横を通り過ぎる。




「珍しいじゃん。アンタが重い物を持ってるなんて」




大概、そういう役目は風磨か地佳だ。



なんだかんだと理由をつけては毎回回避しているのに。




「シンプルにジャンケンで負けたんだよ」




眉間に深いシワを刻み雷斗が言う。



よっぽどムカついているようだ。




「風磨は?」



「アイツは何かまだ買うもんがあるって……」



「なんで赤宮がこんなところに居るんだよ」



「風磨」



「あっ、本当だっ。赤宮彩葉だっ」



「え?地佳も知ってんの?」




風磨が、懐に明らかに何かを隠している風磨が現れ。


あたしの隣に立った地佳まで男を知っているようで。



マジか……。


誰だ?


赤宮彩葉って。




「わからねぇのか?海」



「さっぱわからん」



「……」




そんなに睨まれてもわからんもんはわからん。




「てか、なんでお前はそんに顔が真っ黒なんだよ」



「本当だよねっ」



「焚き火しようとしたら煙がこっちにきたんだよっ」



「バカか」



「バカではな……ぬぅっっ」




笑う地佳に段ボール箱を渡した雷斗が、あたしの……


どうやら煤で黒くなったあたしの顔を、服の裾で拭いてくれる。







「!?」



「雷斗くん、さっきより広がってない?」




なぬ!?




「……おおおおお前の目はふしっ節穴かっ」



「動揺が半端ないな」




そうか、広がったのか……。




「海、コイツは」



「こっちはこっちで、マイペースだな」




風磨による男の紹介。



今のあたしの状況が見えないのかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る