第7話 決戦の金曜日(後編)
スイッ…不浄霊が急に立ち上がりミリアから離れた。
(なに?)
猫(白虎)も体制を崩し爪がスカッと空しく空を斬る。
コロンッと転がってミリアの足を潜ってミリアの足元にポチョンッと出てきた。
「………何してんだテメェわ」
「ミリミリ、つまりな、こういうことや他の客視線を気にした奴がスイッと離れてこうなったんや」
そう盗撮犯は気を感じる術を身に着けているものだ。(猫談)
ポツリ…ポツリとまばらに客が乗車してくる。
その中にOLが1人、不浄霊スイッとOLの方へ徐々に近づいていく…。
小声でミリアが猫(白虎)に話しかける。
「どういうことだ?」
「アレや…申し上げにくいんやけど…アッチの姉さんの方がえぇっちゅうことや」
モニターしていたDrキリコ、爆笑をこらえカッハッとサイレントで愉快そう。
(面白いわ、リアリティショーだわ)
今すぐミリアに通話してバカにしたい衝動を抑えるDrキリコ。
「負けたってことか?」
「……まぁ…好みの問題ちゃうか?」
「ミニスカJK黒生パンのオプション付けて負けたのか?」
「まぁアレや清楚系リクルートスーツOLストッキングの方が…嗜好っちゅうことやで落ち込まんとき」
(中身の問題って言わないのね猫…気を使っているわ…TOP of BEAST、四聖獣なのに不憫、毛並みのいいバカなのね)
バカかどうかはさておいて、猫(白虎)と運命を共にするパートナーのプライドは木っ端ミジンコ。
「解らせたるわー‼ 女のピークが16歳だってことをなー‼」
「そんなん知らんやん…人それぞれやん…今がピークて、来年以降下るだけですやん、それでええんかい?」
猫の独り言なんざ耳に入らねぇミリア。
スイッ…スイッとOLに近づく不浄霊を追い越し、えらい形相でOLの前に立つ。
「えっ?」
「負けてねぇから」
なぜか不浄霊を無視してOLに凄むミリア。
振り返りキッと不浄霊を睨みつける。
傍から見れば空に凄むJKである。
「アカン、アカンでミリミリ、他人から見たら完全にオカシイ感じに仕上がっているで‼」
自分もベラベラと大声で喋っておきながらミリアの心配をする猫。
「知るかー‼」
ヒョイッと猫を両手で抱え大きく振りかぶるミリア。
「猫‼ 爪‼」
「ハイ‼」
猫の前足からニュッと鋭い爪が飛び出す。
「いっけぇーーーー‼」
シャンッ‼
冷たい空気を切り裂いたような音が車内に響く。
目の前の不浄霊が少し遅れて2つにズルッと割れた。
「えっ? なに? コレ、ワシがやったん?」
割れた不浄霊はグズグズと雪だるまが日差しで溶けるように消えていく。
「あぁぁぁ…あぁ…ぁ…ぁ…」
不浄霊の淀んだ目を見てミリアが最後の言葉を放つ。
「JKの生パンは…初日の出の3倍ありがたいはずだろぅが…」
盗撮魔の不浄霊は視線を下に落としたまま消えた。
(何言ってんのこの子ー‼ 今日いち出たわー‼)
モニターしていたDrキリコ、もう笑いをこらえ切れずデスクをバンバン叩いている。
きっと不浄霊とビッチの間でしか解らない、何か通じるものがあったのだろう…。
初戦を辛勝で終え、疲れたので登校を諦めたミリアは家路に着いた。
部屋に戻り「ぶはぁー」と大きなため息を吐き、本題に取り組む。
「いいかげんに命名なさいね」
キリコから言われていたのだ。
何でも四聖獣に命名できるなど名誉なことであるらしい。
命名するにあたりマジマジと腹出して転がっている猫(白虎)を観察するミリア。
体毛『白』成長すると虎シマに生え変わるかもしれないとのこと(Drキリコ談)
瞳の色『金』
肉球『ピンク』
言語『日本語(似非関西弁)西方を守護する役割を担うせいかもしれないとのこと(Drキリコ談)
特技『猫の声帯模写』人前では猫っぽく振る舞うようミリアが躾けた。
「特徴がねぇ…」
「あるやろがい‼」
「白…金…桃…はくきんとう?」
「金平糖みたいな名前嫌じゃ‼」
「どんなの希望なのよ?」
「アレじゃ…強くて神々しさを感じる的な感じ」
「強くて神々しい……スサノオみたいな?」
「ええで、グッと寄ってきたで‼ でもそれ人の名前やからカブったらアカン」
「わかんないわよ~」
とりあえず頭がグチャグチャしてきたのでタブレットを口に運ぶミリア
「辛ッ‼」
ミリアが何か閃く。
「なんや来たのか? 降りてきたんか?」
PiPiPiPi…
「決まったわ名前」
「アンタもはや電話=ワタシになってない?友達いないのね…不憫」
「決まったのよ名前」
「そう、ちょっと待ってね…登録するからね……はいどうぞ」
「ハッカ‼」
猫(白虎)が「えっ」って顔でミリアを見た。
「ハッカ…はい…登録完了、またね」
通話が切れた。
「はぁ~終わった、風呂入ろ」
「待てや‼ ワシの名前ハッカなんか?」
「そうよハッカ」
「せめてミントとか…」
ジッとハッカの目を見てミリアは押し付けるように言った。
「(刺激が)強そうな名前ハッカ」
そう言うと風呂場へ向かったのである。
「引っ張るだけ引っ張って…ワシ、ハッカて…なんか…なんかな…」
窓から月を見てハッカは泣いた。猫のように…。
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