第6話 決戦の金曜日(前編)

「なんで勝負パンティで登校するのかしら?」

 モーニングティーを愉しみながら、ミリアの登校をモニターしているDrキリコ。

 医者何だか博士何だか不明なのだがラボには『Dr,KIRIKO』と表示が張られている。

 観察対象であるJKは、放っておけば3年後にはビッチ確定、その道を、まっしぐらに突き進みそうな嬢…娘。

 レースの黒で出勤…登校している。

 もちろん生パン生足でだ。

「スカートも週単位で1cm刻みで短くなっていないかしら?」

 2カ月もすればスカート履かずに出勤…登校しちゃいそうな嬢…娘である。


「なぁミリミリ」

「ミリミリ呼ぶな」

 背負ったリュックに猫…白虎を入れて登校中のミリア。

 そう、今日は決戦なのである。

 初戦の相手は無害と言えば無害の霊。

「スパッと行くわよ」

「スパッツ?」

「…そういうの履かない主義なの…なんか卑怯な気がして」

 稀に見るバカの会話。

 ソレをジトーッとモニターしているのが天使Drキリコなのである。

(何でスパッツが卑怯なのかしら?)


 そして駅のホームに降り立つミリア。

 決戦のリング…電車に乗り込んだのである。

 あえて皆と登校時間を外して2本遅れで…。

(遅刻とか気にしないのね…授業とか関係ない感じの学力だからね…不憫‼)

「ガラ空きやの~、ワシ電車乗んの初めてやんか~緊張するわ~」

「ただ乗りだからね」

「そうなん? 猫ってええの?」

「うん…猫の持込とかどうなんだろ?考えたことないや」

 PiPiPiPi…

「なに?」

 電話に出るミリア、当然相手はキリコである。

「バカの会話に飽きてきたのよ、いえ呆れてきたのよ…」

「で?」

 もはやキリコとの会話は文字数少なめにしたいミリア。

「猫に代って頂戴」

 無言でスマホを差し出すミリア。

「なんや?ワシ?…もしも~しキリコはん?」

「サクッとやりなさいよ、時間かけずに」

「そんなことかい、まかしとき‼ ワシ白虎やで‼ 心配ない さぁ遠慮せずに能力解放したってや‼」

「凄っ‼ なに能力解放? この猫、そんな感じなの? 凄っ‼」

 ミリアも興奮気味である。

「……能力の解放? ん? その猫そんなことできるの?」

 スマホから漏れるキリコの声。

「………マジ? ワシそんなんちゃうの? なんかバーストモード突入したら凄いことになるもんだと思ぅてましたわ…」

「自意識過剰ね気を付けなさい」

 なんか涙目でフルフルしながらミリアの目を見る猫(白虎)

「そんな目で見られても…えっ? マジ?」

 スマホを中心に数秒間の沈黙が流れ…。

「あっ、ミリミリ…後ろにおるで」

 クルッと振り返れば奴がいた。

 プッ……

 スマホの通話が切れた。

 ミリアは、遅ればせながら初めてニタニタしている奴(盗撮犯の不浄霊)を怖いと思った。

「アカン…ルールが見えん…」

 しかし、この場でミリア以上に恐怖に慄いているのは猫(白虎)である。

 そう自らの存在を勝手に想像していた猫(白虎)それは過信の甚だしい勘違いだったのだ。

 なんか、こういう場において覚醒すればズババババーンと解決して普段はあぁだけどみたいな感じで最後は立派な四聖獣としてミリアを涙ながら別れて天界へみたいな感じを想像していたのだが、現実は甘くなかった。

 そこへきて、隣の貧乳JK黒生パン女は、早くなんとかしろと言わんばかりの目で圧をかけてくる。

(アカン…前門の虎、後門の狼ってヤツや)

 前に不浄霊、隣にJK

 ローカル線以上の、とんでもねぇ速度でガラ空きの電車内に緊張が走る。

 幸いにして盗撮犯の習性でミリアしか見ていない。

(一回、逃げるっていう選択肢もあるんちゃうか?)

 そんなことが頭をよぎった瞬間、顔に出たのかミリアが間髪入れずに言霊を放ってきた。

「オマエ…逃げようとしてねぇよな?」

 ドキッとした猫(白虎)

「走っている電車から何処へ逃げるんですか?」

 思わず標準語、動揺は隠せない。

 後門の狼の方が怖い、そう理解するには十分な目つきであった。

 思わず腹を見せたくなる本能を抑え猫(白虎)スッと立ち上がり前に出る。

 ジッと自らの前足を眺め、爪を出し入れしてみる。

 チラッと後のミリアを見る。

 刺さるような目つきのミリア、コクリと無言で頷き、クイッと顎で『殺れ』のサインにコクリと頷く猫(白虎)

 そうミリアも耐えていた。

 短めのスカートの中を覗き見る不浄霊に。

(なるほど…そのための勝負パンツか…やるわね見込んだだけのことはあるわ)

 電車内に放ったクモ型カメラでモニターしているキリコ、遅めの朝食はシリアルだ。

 ミリアは目で訴えていた。

(盗撮犯は自分も見られているのだという意識が薄い、アタシが囮なっている間に殺れ‼)と…。

 そんな長いメッセージが伝わるはずもない。

 他に客もいない車内でスクッと立ち上がり不浄霊に背を向けたミリアがツツッと足を静かに左右へ開く…。

 屈んだ不浄霊が下から覗き見ようと上体を傾ける。

(チャーンッス‼ オマン逝けやー‼)

 猫(白虎)が爪で切り裂こうとした瞬間。

 ガクンッと車内が大きく揺れた。

 次の駅に着いたのだった。


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