第4話 オカルトに現実を諭される日
「寝不足だ…」
「嘘つけ‼メッチャよぅ寝てたで自分」
「量より質の問題なのよ‼」
身支度を整えて電車で高校へ通うミリア。
思わず降りる駅を乗り過ごした。
寝不足のせいじゃない、電車の窓の向こう側ジッと車内を覗き込むナニカが張り付いていたからだ。
(メッチャ見てる…思っくそ目が合ってる)
ガンを飛ばされると、しっかりと受け止める性格。
そのナニカが電車から剥がれるように消えるまで見ていたら乗り過ごしたのだ。
悪気はない。
(なにアレ?)
2つ先の無人駅で降りたミリア。
「なんじゃ、ありゃー‼」
思わず叫んだ瞬間スマホに着信音。
「オマェ、アレなんなんだー‼」
「アンタってアレ? ワタシ以外に電話してくる人いないの? 100%ワタシという確信をもってイキナリ話してるわよね、可愛そう…48点でボッチなんて救ってあげたいアーメン」
スマホの向こう側から十字を切って祈るキリコ。
「ア・レ・は・な・ん・で・す・か?」
「……ア・レ・は・不・浄・霊・で・す」
とことんミリアをバカにしているキリコ、彼女は天使だ。
「ふじょう霊?」
バカにされても仕方ないミリアの知識、言い方に無知が滲んでいる。
「そうよ咀嚼が必要? 必要ね、顔で解るわ」
「容姿は80点超えって言ってんだろぅ‼あぁっ‼」
容姿48点には納得が出来ていないミリアの語尾が
「聞きなさい
火に油を注いで、からかうことが生きがいのような天使キリコ。
ミリアは最上級の玩具だ。
「メッチャ見てたぞアタシのこと」
「そうよ彼は盗撮の常習犯でしたからね…見るだだから大丈夫ですよ痴漢ではありません、ソレは彼のポリシーです」
「見るだけ…?」
「いや正確には撮っちゃうから捕まったこともあるようね」
「無害?アタシの無害の概念がオカシイのかしら?」
「ほらっ、霊はスマホとか持ってないから、見るだけ…見られている方気づかないし霊だから」
「性質悪くなっただけじゃない?」
「そういう解釈もあるわ」
「そんなヤツ成敗‼成敗‼」
両手をバタバタさせて実力行使を訴えるミリア。
ココが無人駅で幸いだ。
「アンタ…成敗ってどうやって? アンタ視えるだけよ…無力なのよ」
「白虎がいるでしょうが‼」
「…アンタの部屋にね…寝てるわよ…カリカリ食って、ちょっと水溢して今寝てるわダンボールで」
「……なんかこう…召喚的な?」
「ないわ‼ ニュートン物理をバカにしないで頂戴‼」
「この先のこともありそうだから聞くけど、連れて歩かなきゃダメなの?」
「そうね」
シレッと答えるキリコ。
「マジか……」
ミリアは身をもって3次元の不便さを感じたのである。
………
とりあえず電車を乗り換え登校したが、すでに4限目。
「遅れました」
授業中にも関わらず堂々と正面から教室に入るミリア。
「………」
歴史を教えるベテラン教師も唖然である。
何事も無かったかのようにポスンッと席に座り窓の外を眺めるミリア。
2日目の登校にして、完全にミリアは異質生命体伝説の幕を開けたのである。
「マジで…完全にヤバい人じゃん…」
密やかに、そんな噂が広まった午後。
(友達って…ファンタジー?)
立ち入り禁止の屋上でボッチ飯を食べるミリア。
コレが後3年続くと思うと…自然と涙が溢れてくる。
登校初日にハネられたりしなければ……?
「アレ?……そういえば、事故の処理とか? アレ入院したんだよね、検査入院だったけど」
なんか記憶が曖昧になっている。
「えっ? 頭打ったせい?」
PiPiPi…
「どういうこと?」
「もう言わないわ…ボッチだもん電話をかけてくる相手がワタシだけだもんね…可哀そう」
「だからどうして?」
「うん…バカでも解る様に簡単に言うわよ…数人の記憶をイジったからよ」
「………できるの?」
「できるわ、ワタシ天使だし頭いいし美人だし」
唖然とするミリア。
「それができるなら、クラスメートの、この2日ほどでいいんでけど、なんかいい具合になりませんか?」
ミリアなりに下手にでて聞いてみた。
「無理よ‼」
「何だテメェ‼ やれや‼」
「無理って言うか嫌よ‼」
キッパリと断るキリコ。
「オマ…ちょっ降りてこいや、なぁ‼」
「それも嫌よ‼ あのねワタシは割とヒマなの、だからねアンタみたいなの観てると楽しいの解る?」
「観てるって書きやがったな‼ 視聴者目線か?」
「そうね、あるいはプロデューサー目線ね、ほらっ珍獣ってモニター越しなら面白いけど家にいたらイヤじゃない? そんな感覚でアンタの人生を見守り、時にハプニングを仕込んでいこうと思っているわ」
「ヤラせじゃねぇか‼ それに珍獣って……あっそうだ、ウチのアレ、白虎…幻獣?どうすればいいの? アレ持ち運ばないと使えないの?」
「そうね不便ね…なんか考えてみるわ」
「マジ?」
「うん、キャットキャリー的な感じで」
「イヤじゃボケ‼ なんか召喚的な感じにせいや‼」
「召喚って…アンタ、ファンタジーじゃないんだから…現実を見て、魔法少女に憧れる歳じゃないでしょ?」
そしてまた電話は一方的に切れた。
しばし青空を眺めていたミリア。
(
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