第3話 カップ焼きそばより軽いネコ

「せやから、ワシを飼う以外の選択肢はないっちゅう現実を受け止めてやな~」

「簡単に言うけど、ネコ飼うだけでも家族会議よ普通、それを聖獣? そんなツチノコ的な存在を簡単に受け止められないわよアタシ」

「ワシUMAちゃうねん、もっと神聖な、神っぽさ醸し出してくる感じやねん」

「アタシの中では……神様、薄汚い段ボールで送られてこない…」

「アホ、このダンボール優れもんやねんで、暖も取れるしな」

「あぁだからボール?」

「ちゃうわ…オツム小学生か?自分」

「高校生になれたわ‼ JKライフ満喫中‼」

 PiPiPi♪

 スマホに非通知の着信。

「チッ、またあの天使か…はい?」

 すでに非通知=キリコと少ないシナプスは直結されたらしい。

「…舌打ちした?」

「……いえ別に」

 監視されているのかと疑い部屋をウロウロと歩いて回る。

「なにがJKライフ満喫中よ、アンタ完全に孤立してたじゃない、高校デビュー失敗したじゃない」

「うるさい‼ まだ初日終わっただけ‼」

「高校デビューするために、わざわざ遠い高校選んだのが裏目ったようね」

「……」

 そう、自分を知らない連中に『噂の美人新入生枠』に入ろうとした自分の選択を恨んだ。

「鏡拭いてみなさい、可も無く不可もなくだから」

「80点は超えているわよ‼」

「アンタの100点は誰よ‼ 誰なのよ‼」

「……クラスで3番目くらいだったもん」

「ソレは量産型アイドルグループってことよ残念だけど、新のアイドルってのは独りで成り立つのよアタシのようにね、100をね48で割ったら半分以下じゃない、そういうことよ48点」

 なんか涙でそうになった。

「心配ないで姉ちゃん、上から葬っていけば、いつかは1番や‼ スカイツリーへし折って、東京タワー潰したら、通天閣が1番やん‼」

 それまで暇そうに丸まっていたネコに慰められた?

「思い出したわ、アンタをからかう為に電話したんじゃなかったわ、アンタ、ソレ育てなさいね、取説読んでね、ソレ上手に育てないと大変ことになるから、よろしくね、ペヤングが…お湯切らなきゃ大変、じゃね」

 早口で言いたいことだけ言って切りやがった。

 チラッとダンボールに目を向けると、真っ白いネコの子がなんか落ち込んでいる風。

「ワシ…ペヤング以下? アイツ、ペヤング優先してへんかった? ワシの扱いってそんななん?」

 なんか目に涙浮かべてた。

「ん」

「なんなん?」

「取説‼」

「飼ってくれんの?」

「エサは…カリカリでいいわね」

「基本ええで…缶詰もたまに、ヨロシクやで」

 1階からママがアタシを呼んだ。

「ミリア~ご飯よ~」

「今行く…あっママ~、アタシ、今日からネコ飼うから~」

 3話目にして自己紹介ができました。

 はい、ミリアと言います。主人公です。

「ミリアちゃん、何読んでるの? 漢字読める?」

「雰囲気で解る~」

 夕食を食べながら取説を読む。

「な…なんじゃこりゃ…」

 要所要所に散りばめれた『戦』の文字。

 ハンバーグを味噌汁で流し込みゴクンッと飲み込む。

「ごちそうさまー‼」

 ドタドタと階段を駆け上がり部屋へ戻る。

 バンッ‼勢いよくドアを開けるミリア。

「なんや騒がしいのー、狭い家で走るなや加速する前に壁やんか」

「ダンボールに住んでるオマエがいうな‼ ってかコレなに?」

 ミリアがペラい取説をバシッとネコに投げつける。

「取説やん…ワシのお世話の仕方が書いてあるんちゃう?」

「戦うってワードが多めなんですけど‼」

「……せやけど…なんか?」

「何と戦うの?アタシ」

「キョどるな姉ちゃん、ワシはネコやないんやで、白虎や‼ 虎って書くんやで、そりゃ戦うで~」

「だから何と‼何と争ってんのよ‼」

「そりゃ…まぁなんか…巨悪的なソレっぽい何かなんちゃう? もしくは霊的なもんかもしれんで」

「んがっ…」

 思わず変な音が出た。

 PiPiPi…

「もしもし‼ アタシ何と戦うの‼」

「アンタねぇ…かけた相手より先に喋るってどうなの? ビックリしたわよ不死身だけど心臓口から出るかと思った」

‼」

「はいはい…アンタがソレと戦うのは~悪魔的なアレです、時折、妖怪的なソレかもしれませんし霊的なナンカのこともあります…以上‼」

「……切りやがった」

「燃えるわ~ワシ燃えるわ~」

「燃えて…そして灰になって…おねがい」


『ミリアです、主人公やってます。 オカルティなものと戦うっぽいです』


「ネコ…戦えるの?」

 マジマジ見ても、ただの白い子猫である自称『白虎』に不安感が拭いきれない。

「やるで~ワシやる気出て来たわ」

「必殺技とかあるの?」

「必殺? 二重の極み的な?」

 シュッと前足を突き出しシャドーを始めるネコ。

 ソレをポフッと受け止めるミリア。

「こんなグミみてぇな肉球ぶら下げてアスモデウスを倒せるかー‼」

「オマエ、アホかー‼ LV1でメラゾーマ撃てるかー‼ メラがギリじゃ‼」

「ふぅ~っ……」

 大きなため息、身体から力が抜けていくミリア。

(ダメだ…とりあえず名前から考えよう)



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