第2話 このダンボール産まれが‼
ドクター・キリコと名乗る自称天使のラブホ…ラボから蹴り落とされたアタシは
真っすぐに身体へ向かってまっしぐら。
「ゲハッ‼」
目覚めれば救急車で運ばれている途中であった。
早々に諦めたのか救急隊員はタバコ吸いながら談笑中、寛いでいやがった。
アタシが目覚めた、いや生き返ったことに気づいていない隊員はサイレンも鳴らさずに安全運転である。
「笑うよね、この黒パンJK」
「俺、風俗嬢かと思ったよ、現役とはね~アッハハハ」
なんか後ろで聞いてて腹立ってきた。
ガンッ‼
シートを思い切り蹴ると隊員がビクッと硬直して、ゆっくりと振り返り叫んだ。
「ぎゃぁぁぁー」
「死んだとでも思ってたか? あぁ⁈」
病院には自分の足で歩いて入った。
「聞いてた話とちゃいますやん…」
連絡を受けて待っていた医者が驚く健康体。
それでも一応検査入院ということで2晩入院することになった。
「退院です」
「あざす」
3日遅れの登校初日、アタシは入学3日で伝説と化していた。
クラスでは馴染めなかった。
誰も話しかけてくれない…完全にデビュー失敗した…わねアンタ。
「うっせぇわ‼」
自宅に帰るとスマホに着信、非通知、出たら、あの天使だった。
「っていうか電話できんのかよ‼ 天国ってどうなってんだよ、意外に身近に感じるわ‼」
「アンタ、1回来たしね、身近に感じてくれて結構よ、今やそのスラムのようなアンタの部屋は天国に一番近い部屋」
「見えてんのかよ‼」
「見えるわ、ワタシ天使だから、優秀な天使だから、優秀且つビーナス超えの容姿を持つ天使だから…神よ、なにゆえワタシに…あぁコレも罪なのでしょうか?アーメン」
「な・ん・の・よ・う・な・の・よ?」
「あぁそうだった、段ボール届くわよ、もうじきに」
「あん?」
「アンタバカのなの?白虎よ、アンタが選んだ聖獣ね」
「……そうだった、案外元気だったから忘れてた…アタシ死んだんだ1回」
「そうね、アンタもう残機0よ」
「みんなそうだろ? コンテニューだよ…課金してコンテニューだよ」
「そうね、そして新たなステージはハードモードよ」
「なんで?トラ育てるだけじゃん」
「アンタ…トラ舐めてる? アレなかなかよ、アンタがこれから育てるのは、そのトラの王様みたいなもんよKING OF KINGよ」
「そんなヤベェもん、この平和ボケ日本で育てらんねぇよ、動物園かサーカスに売るよ…そのほうがお互いのためだよ…」
「そんなことしたら速攻コキュートスに送るから、容赦しないから」
窓を開ければ青い空
「いい天気だ…ゴフッ…」
顔面に何かが叩きつけられた。
「届いたようね」
「あん?」
足元に転がる汚ぇ段ボール。
「しっかり育てるのよ、100年、途中で放棄したり、死んだりしたらコキュートスだから」
「聞いてねぇんだよ‼ そんなルール‼ クーリングオフを要求する‼おい…おい‼」
電話は切れていた。
足元に転がる段ボール。
モコッ…モコモコ…
変な震え方してる段ボール、とても汚ぇ段ボール。
バフっ‼
埃を舞い散らかして蓋が開いた。
「えっ?」
そ~っと覗き込むと、白い塊がモゾモゾと動いている。
「白虎…コレが? KING OF KING?」
モゾモゾがアタシを見上げて真っ赤な目を見開いた。
「ニャーッ」
「ネコじゃん…白いネコじゃん、かわいい」
抱っこしようとそっと手を伸ばすと無言でシャッと引っかかれた。
ツーッと血が流れる。
「………」
しばらく無言の睨みあい。
「気安く触んなや…」
「あぁ?」
またしばらくの睨みあい。
アタシはスクッと立ち上がり段ボールを抱えた。
そのまま部屋を出て…家を出て…河原へ行き…川へそっと浮かべた。
「おいおいおい‼ 待てや‼ オマエ正気か? ワシ聖獣やで? 白虎やで?」
「知らん…これから飼われようという謙虚さを感じない、そんな奴いらん」
「オマエ…名誉職なんやで、ワシを育てるって凄いことやん? ワシ将来、白虎やで」
「……今はネコだ…」
「ちょっと待て、ネコちゃうで‼ ネコ喋らんやん?」
「あぁ…喋らなければ良かったのに…アーメン」
「天国から送られてきたのに、送り返すつもりか? 返品不可じゃ‼」
「コッチも受け取り不可じゃ‼」
口の悪いネコと言い合うこと数分。
アタシのスマホに非通知の着信。
「もしもーし‼ おい、どうゆうつもりだ? この口の悪いネコはなんだ‼」
「アンタねぇ、かけた相手より先に喋るってどう? アンタそういうことだから車に跳ねられるのよ、気を付けなさい、うっかり契約途中で死んだらコキュートスなのよ」
「その契約について、あきらかに説明不足だっただろ‼ クーリングオフを要求する‼」
「ないわよ、バカねぇ、さすが風俗GOGOね~、天界との契約に平等なんてないの、ある意味、押し付けなの、悪魔と違うのよ、天使は圧が強いの」
「せやで、姉ちゃん、大人しくワシを育てるこっちゃコキュートスなんてアンタ、毛皮着てても寒いんやで~」
スマホから天使、川からネコの熱意ある説得で一時的に家に連れ帰ることになりました。
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