第99話

そうだよ。とあっさり回答した夢月は、平然と紅茶を飲んでいる。




「ふーん。」



クッション越しに可愛い声の相槌が聞こえた。



…いや待て待て待て待て。





「え?りー君って夢月が麗龍の総長だった事知ってたの!?」


「うん、だってこの腹黒夢月に僕脅されたから。」





夢月が脅す?



それは夢か幻かの間違いじゃないのりー君。


こんな絵本から飛び出してきたような完璧な王子様の代名詞とも言える夢月が脅しなんてするわけない。




鬼帝剣や門倉道梨じゃあるまいし。





「それには語弊があるよ莉苑君。俺はただ、麗龍の総長…つまりはこの県の東の支配権を握っているから、君を真白の傍から排除する事くらい容易いよって教えただけじゃない。」





うん、純粋に脅しだなそれは。



満面の笑みで開口する王子様に、無言で中指を立てるりー君の姿が視界に映って眩暈を覚える。



何てこった。もうすっかり道梨に染まっちまってるじゃねーかよ。





「あーあ、いつか夢月の本性を真白に暴露して二人の仲を引き裂いてやろうと思ってたのに。」


「残念だったね、俺と真白は本性を曝け出したくらいでは崩れない程の固い絆で結ばれてるんだよ。」


「うっっざ。」


「あはは、思春期は難しいね。」




口調こそは穏やかだけれど、二人の間には確実に火花が飛び散っている。



それにしても、私ってば今めちゃくちゃ小説のヒロインっぽい状況じゃない?



こんな美形二人に好いて貰えるなんて、最高かよ。生きてて良かった。





グッジョブだぜ、神。

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