第100話
「そういえば夢月、そろそろあの時期って言ってたけど何の事?」
麗しい男二人に囲まれた空間に緩みそうな頬をビンタして、私はコテンと首を傾げた。
無駄に睫毛を瞬かせる事も忘れない。
「ああ、そうそう今日はお姫様をお誘いしに来たんだ。」
紅茶を飲み終えた彼が、空になったティーカップとソーサーをテーブルに戻す。
それから私の視線を絡め取って、優しく目を細めた。
「来週の夏祭り、俺と一緒に行ってくれない?」
舞踏会でシンデレラを誘った王子様さながら、私の手を取って優美な笑みを浮かべた相手。
ドキリと不覚にも胸が弾むのは仕方がない。
だって私は美形が大好物だから。(開き直り)
「そっか、もうそんな時期なんだ。」
自然と言葉を漏らしながら、今年の夏は過ぎるのが早いなとつくづく思う。
毎年、この近所で催される夏祭。
そこへ夢月と二人で行くのが、昔からの恒例行事だ。
「今年は50回記念で打ち上げ花火が盛大らしいよ、絶対真白と見たいなって思ったんだ。」
「夢月……。」
「俺と一緒に行ってくれる?」
相変わらずこの人はときめく言葉を容赦なく投球してくる。
しかも毎年こうして、彼から私を誘ってくれる辺り、紳士でしかない。
「俺の金玉…間違った銀魂の漫画知らねぇ?」
「どんな言い間違いだよ。」
つい先日、わざわざ私にそんな電話を寄越してきたあの男に、彼の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。
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