第97話
「きゃー!誰かと思ったら夢月君じゃない!」
「(ダレダ、オマエ。)」
さっきまで私に浴びせていた冷たい視線は何処へやら。
目にハートを浮かばせて、可愛い声をあげる母親がやっぱり将来の自分にしか見えなくて悲しくなる。
ああはなりたくない。絶対になるまい。
「こんにちは、お邪魔します。」
「げっ、何か今年の夏はあんたとやたら会うじゃん。」
「あはは、年頃の莉苑君と真白が心配でね。監視しなきゃと思って。」
「全然目が笑ってなくて怖いんだけど。」
クッキーを頬張っていたりー君が、可愛い顔を歪めて夢月に向かって舌を出した。
…な、何だか道梨に似てきたような気がするな。これで中指も突き立てるようになったらしまいだ。もう完全門倉道梨になっちまう。
絶対阻止しないと駄目だ、あの男に影響されたら碌な人間にならない。
「夢月君、丁度ねクッキーを焼いたの。食べて食べて。」
「美味しそうですね、お言葉に甘えさせて頂きます。」
おいいつの間に夢月のクッキーを皿によそったんだ。
最近老いのせいで動きが鈍くなってきたと嘆いていたのはどこのどいつだ。
めっちゃ俊敏に動けてるじゃねぇかよこの女め。
雪乃のぶりっ子にも常に笑顔で対応してみせる王子様に手を引かれるがまま、私たちはりー君の隣に腰を下ろした。
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