第87話

自信がないんだ。



私は、素の自分に対して何一つ自信がない。




とても可愛いとは思えない言葉遣いだし、態度だって可憐らしさは皆無。



更に性格は心底悪いときた。





そんな私を好きだと言ってくれた剣を信じていないわけではないけれど、やっぱりまだ、どうしてこんな私を好きなのかが分からなくて怖くなる。





「真白。」





低くて艶のある声で呼ばれた自分の名前に、肩が大袈裟なくらい揺れた。




自然と降下してしまう目線は、きっと私の自信が地下通り越してブラジルに到達するくらい喪失してしまっているからだろう。






「何怖がってんだ。」


「え?」


「お前は何が怖い?何がそんなに不安なんだ?言え、全部ちゃんと言ってくれ。言葉にしてくれねぇと俺は汲み取ってやれねぇ。」






ねぇ。


あんたって奴は、馬鹿で性欲塗れでどうしようもなく無鉄砲なのに。




どうしていつも、誰よりも、私の事を理解してくれているの?


私の欲しい言葉ばっかり投げてくれるの?






「我慢しないで良いって言ってくれんのは素直に嬉しい。だけど、意味ねぇだろ。」


「……。」


「真白が、心からちゃんと俺と繋がりてぇって思ってくれないと身体を重ねる意味なんてねぇだろうが。」


「…っっだって…。」


「焦んなよ、弱気になるな。お前らしくねぇな。」





月明りに照らされるニヒルな笑みと、対照的な柔らかい言葉に涙腺が緩む。




瞳に溢れる雫を隠すように、剣の胸に顔を埋めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る