第83話

「お前は最高に良い女だ。」


「俺はこんなお前が好きだ。」




あの男が平然と繕わない私を受け入れてくれた時、目に映らない柵から解放された気分だった。



嗚呼、私らしくても良いんだって。



本当の自分を好いてくれる人もいるんだって、柄にもなく泣きそうだった。





「……ありがとう。」




初めて会った時の印象こそは最低だったけれど、心から彼と出会えたことに感謝している。



偽る事を辞めても尚、幼馴染の彼と良好な関係を築けているのもあの男のおかげだし。



何より、私が虎雅の皆とも麗龍の皆とも仲良いままでいられるのも、剣がそうなるように導いてくれたからだ。






「どいたま。」





……え?




背後から掛かった艶のある声に、反射的に振り向く身体。



そこには、飛鳥と同室にさせられたはずの剣が優雅にベランダに設置されている椅子に腰かけていた。





「よう。」


「ぎやぁあああああ!!!!痴漢!!!!」


「いやお前の彼氏だろうが!!!!!」






何で?



何処から来た?



どうやって入って来た?





怪訝な顔して私を視線で射抜いている男。


いや、私がその顔したいんだけど。





「ど、どんな技を使ってここまで来たの。」


「あ?隣の隣だったからベランダ這って来たに決まってんだろ。」





決まってないだろ。



怖っ。普通に心臓飛び出るかと思ったよ私。

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