第82話

分かっていたけど…ひとり部屋って退屈だ。




「星、綺麗…。」





内容が濃厚だった今日の余韻が消えないせいで、やっと静かな空間になったのに睡魔が襲ってきてくれない。



まだ乾き切っていない髪をタオルで拭きながらベランダに出れば、夜風と波の音。



そして満天の星空が私を迎えてくれた。






「信じられないなぁ。」




圧巻の景色を望んでいる私の口から自然と転がり落ちた独り言。



本当に、信じられないよ。




こんなに楽しくて、大切な人達と過ごせる夏休みが私に訪れるなんて…都合の良い夢なんじゃないかって思ってしまう。



それくらい、今までの学生生活における夏休みは悲惨で虚しい物だった。





だから、胸の高鳴りが止まないの。


だから、嬉しくて幸せでたまらないの。






「………それもこれも、剣のおかげか。」




手摺りに頬杖を突いて、永遠に広がっている煌めく星を見つめる私は、鬼帝剣と出逢っていなければどうなっていたのだろうと考える。




きっと、まだ夢月の事が好きで。



彼に好きになって欲しくて、懸命に自分を偽り続けていたのだろう。




本当の私を見せる事のできない事に苦しんで、彼を騙している事実に悩んで、葛藤の狭間で溺れもがく自分が簡単に想像できて苦笑が漏れる。

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