第81話

あの、すみません。距離が近すぎるんですけど。




吐息がかかる位置にある愛らしい顔を持った男は、いちごみるく柄の海パンに着替えている。



どんだけ好きなの?



よく見つけたねその奇抜な柄の海パン。何処に売ってんだよ。





「はいはい、門倉君も真白に接近し過ぎ。」


「うわっ。」





背後から伸びて来た腕で道梨が軽く持ち上げられた事に唖然としていたら、いちごみるく星人を抱えたままの夢月が色づきの良い唇をそっと緩めた。





「あんまり油断するのめっ!」


「……っっ。」





これはなんちゅうご褒美だ?ん?



私に向けて放たれた麗しい幼馴染の一言は、夏の暑さや陽射しよりもこちらをクラクラさせてくる。






「ナニコレ。」


「狡い。」


「反則じゃない?」






夢月に対して、到着したての飛鳥がムッと頬を膨らませ。


彼に続けてりー君も道梨も苦言を呈する。




そんなクレームも煌めく笑顔で受け入れる彼の器は、大財閥の御曹司だからか、はたまた花咲学園の生徒会長だからか、それとも麗龍の総長故か。





「さぁ、バーベキューの準備ができてるよ。お腹空いたでしょう?皆で食べよう?」


「うっしゃー!!肉だ肉!!!」


「あ、鬼帝君のはないよ、自分で目の前の海原へ漁に行って食料調達する事だね。」


「何でだよ!!!!」






いずれにしても、彼が剣よりできた人間なのだけは確かだと思う。

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