第80話

「よし、今日からお前は俺の友達だ!」


「無理嫌だ。」


「は?……は?」


「だから嫌だ。僕は真白がいれば良いもん。」





私の身体に自身を密着させて、小悪魔な笑みを湛えたりー君にあっさり振られた男が灰になっている。



傷心してやんの。






「何でだよ!!!!そこは嬉しいって歌い踊り出す所だろうが。」






その展開はウォルトディズニーの世界観でしか許されてないんだよ。






「真白。」


「ん?」





既に鬱陶しい剣は無視が一番だと体得したらしいりー君が、不意に私の耳に自らの口を寄せてきた。



鼓膜を突く彼の中性的な声。






「水着、似合ってるよ。襲いたいくらい。」


「…へっ!?!?」


「ふふっ、ずっと言いたかったんだぁ。」





ちょっ……ま……え…カワ、カワイイ。何この人。


すげぇ可愛い。





頬までしかない短い髪をサラサラと揺らしながら微笑む相手は、去年の夏よりも、あきらかに色気が増していた。






「はいはい、近親相姦はめっ!」





突然人が変わったのかと錯覚するくらい、大人びた表情を見せるりー君に奪われていた意識は、私の視界を強引に独占した可愛い顔によって遮られた。






……この門倉道梨め、今とてつもない事言わなかった?

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