*S

第79話

ムカつく。



ムカつくくらい、格好良いから困るんだ。





「何で…。」




剣の言葉が予想を裏切っていたのだろう、口をポカンと開けているりー君もまた随分と可愛い。



昔から中性的だった彼だけれど、小学校の高学年になった頃から長い髪のウィッグを被ったり、ワンピースやスカートを好んで身に着けるようになった。



それに対して「わぁ、何で私より可愛いのよこんにゃろう」って思っていたのはどうやら私だけだったらしく、うちの両親もりー君の両親もかなり重大な問題だと頭を悩ませていた。





そっか。りー君は、可愛い物が大好きなんだね。





「皆…僕の事馬鹿にするのに…気味悪がって友達なんてできやしないし、親にも辞めてって言われるし…だけど心は好きなように生きたくてっ…仕方なくてっ…。」




ちょっと!?!?私の可愛いりー君にこんなに悲しい想いさせた奴誰だよ、ぶっ殺すぞ。



涙を浮かばせて、苦しそうに言葉を紡いでいる彼の姿が痛々しくて、儚い。





「あ?お前友達いねーのか、真白とそっくりだな。」


「おい。」




確かにそうだけど、あんたも大概周りから距離置かれてるだろうが。






「哀れな奴等だな、お前みたいに面白い人間滅多にいねーのに友達になろうとしないなんて。」


「……。」


「俺はお前と友達になりてぇけどな、呪怨。」




だから莉苑だっつってんだろ。



友達になりたければ名前をちゃんと覚えて貰える?せめて呪怨からは変えてくれない?不吉すぎるでしょその響き。

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