第66話

「何だこいつ、砂掛けババァかよ。」





チューチューチュー



いちごみるくと書かれたパックに突き刺さるストローを咥えながら、砂浜でくたばっている男を見下している道梨が、怪訝な顔を浮かべた。




あんなに可愛い飲み物をあそこまで柄が悪そうに飲めるのは、世界中何処を探してもあいつくらいだろうな。






「あら、インスタ映えしそうじゃない。」



カシャ




無駄にレースがくっついている日傘を差しながら、総長にスマホを向けた大男が「やっだ、映えてるぅ~」と不釣り合いなオネェ口調を披露してはしゃいでいる。






「つ、つ、つ、剣君!!!!!そんな……そんな上半身裸なんて…破廉恥やで!!!!」




水着なんだから当たり前だろうが。



赤面して両頬に手を添えた一見美人の男は、未だに砂浜で絶望している馬鹿の見事に割れた腹筋を見て涎を啜っている。



おいおいおいおい。私の彼氏を堂々と狙うんじゃないよ。





「はぁ…早速騒がしい。」


「うん。でも真白と来られて嬉しい。」


「ひゃっ……。」




突然頬にひんやりと冷たい感触が走って、気色の悪い声を思わずあげてしまった私を背後から抱き締める温もりと、耳元に落とされた色気のある声。





「あ、飛鳥……。」


「これ、お水。真白が熱中症なったら大変。」




どうやら私の頬を襲撃した犯人はキンキンに冷えたペットボトルだったらしい。



振り返った途端に、視界を独占した麗しい微笑みにクラクラする。





既に水滴を側面に浮かせたペットボトルを私に差し出した飛鳥は、夏の太陽の下だからかいつも以上に美しく輝いて見えた。




はい、その爽やかな笑顔、清涼飲料水のCM決定!!!!

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