第54話

それにしても、夏の朝に騒音被害を与える蝉達の鳴き声くらい騒がしい奴等だな。




つい数分前までは穏やかで静かな空気が流れていた生徒会室が一変、あちらこちらからミーンミンミンって大音量で聴こえてくる。煩い。





「もう駄目だ、治外法権だ。」





この状況にあっさりと匙を投げ捨てた鈴が、背もたれに凭れて顔を覆った。



おい諦めんなよ、退治してくれよ、あんた年上でしょうがよ。





「紅茶が飲みたい奴はいるか?」




何でお前は歓迎モードなの????



律儀にエプロンを着直した聖架は、嬉しそうにキッチンへと消えて行く。





「あ、僕はいちごみるくで。」




ふざけんな、そんなの置いてないんだよ自分で買って来い…「こ、これで良いか?」




え?




隣から聞こえてきた予想外の言葉に慌てて視線を流せば、そこには片膝をついて道梨にいちごみるくを献上する蘭の姿があった。



どうしていちごみるくを準備しとる????




しかも何あれ、プロポーズかよ。指環でも渡してんのかよ。





「お、ワンコロ気が利くじゃん。」


「……………っっはい!!!」





「はい!!!」じゃないんだよ、プライドはないんか。


惚れてまうやろみたいな顔やめろ。もしや寧ろもう手遅れか?惚れ切ってるんか???





「あーどいつもこいつも煩ぇな。発情期かよ。」


「お前がな。」





やれやれと綺麗な顏に書かれている剣が腹立って仕方ない。

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